こんにちは。冨樫純です。
「愛人に財産を残すとの遺言の効力は?」についてのコラムを紹介します。
不倫や愛人でも、事情により財産相続が認められることに驚きました。
被相続人に実は愛人がいて、その愛人に遺産の全部や一部を残す旨の遺言書が出てきたとしましょう。
自分の死後財産をだれに承継させるかは遺言者(本人)の自由だといっても、このような場合には遺留分とは別の問題が生じます。
たとえば、生前の贈与として、ある男性が妻以外の女性との不倫の関係を維持するために女性に月々50万円支払うことやマンションを贈与する約束をした場合、この贈与契約は無効と考えられています。
現代の婚姻秩序のもとでは、夫婦は互いに貞操義務があり(要するに、不倫はダメということ)、これに反する契約は社会的妥当性がないからです(民法90条の「公序良俗違反」)。
その延長で考えると、不倫の関係を維持するために、自分が死んだら財産をあげるとの遺言についても、同様に無効ということになります。
ところで、こうした不倫の関係にある女性に対する遺言の効力が裁判で争われるケースは最近でもしばしばみられるのです。
新聞にも報道されたケースとして、7年間、半同棲という不倫の関係にあった男性が全財産の3分の1をその女性に残すとした遺言の効力につき、最高裁は、この遺言は、不倫の関係の維持継続を目的とするものではなく、自分の死後その女性の生活保全のためになされたこと、遺言の前後で両者の親密度が増したとはいえないこと、その遺言により他の相続人(妻と娘)の生活が脅かされるとはいえないことなどを重視して、無効とはいえないと判決しました(最高裁 1986· 11 · 20 判決)。
ですから、不倫の相手方に対する遺言でも目的や相続人への影響などを考慮し、すべて無効というわけではなく、前記のような事情があれば有効とされる場合もあることになります。
ただし、その場合、相続人の遺留分を侵害すれば相続人がクレームを出せることは当然です。
下記の本を参考にしました
『ライフステージと法 』
副田 隆重 他2名
有斐閣アルマ