とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

不倫と法律

こんにちは。冨樫純です。


ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。


法律的なものです。


質問の内容は、主に女性目線からものです。


質問


妻子ある彼とつきあっていたら、突然、奧さんの代理人だという弁護士から、「つきあいはやめろ、慰謝料を支払え」 という手紙がきました。


私は、何か悪いことをしているのでしょうか。


解答


夫婦は同居して互いに協力し、扶け合わなければなりませんし(民法 752条)、第三者と性的関係をもつと、不貞行為として離婚原因ともなります (同770条1項1号)。


二重に結婚をできない(同732条) など、民法が一夫一婦制の建前をとっているということは明らかです。


それでは、夫婦の一方と肉体関係をもった第三者は、他方配偶者から、夫または妻を奪ったとか、不倫をしたということで不法行為の損害賠償を求められてもしかたないのでしょうか。


裁判所は、夫婦の一方と関係をもった者は、自分が積極的に誘惑したとか、自然の愛情によったかどうかにかかわらず、他方の 「夫または妻としての権利」 を違法に侵害したもので、慰謝料の支払義務があるとの立場をとっています(最高裁

1979 ·3· 30 判決)。


また、性的裏切り行為である不貞行為に加担した相手方にも共同の不法行為責任を課さないと、妻の地位は守れないとか、幸せな家庭生活を破壊した者には相応の責任をとらせるべきだという考えかたもあります。


実際に、裁判所で認められている慰謝科は、数10万~500万円くらいですが、訴訟は愛情の奪い合いという感情的な対立に終始することが少なくありません。


夫婦関係の亀裂やが弱いからこそ異性関係に走るのであって、守られるべき愛情利益はないのではないか、不倫の相手方に損害賠償をさせても、円満な結婚生活が戻ったり結婚の安定がはかれるわけでもなく、慰謝料の金額も合理的算定基準がないなどとの批判も有力です。


欧米諸国では、第三者への慰謝料請求を認めることに否定的で、むしろ弊害のほうが大きいと考えられています。


不法行為の損害賠償を認めても、問題の本質的解決にはならないことが多いのではないでしょうか。


不法行為責任の予防的機能についても、「慰謝料をとられるから不倫はしない」 という効果はほと

んど期待できず、制裁を加えたからといって、失われた夫婦の愛情や信頼は回復しないように思われます。


夫婦の一方は裁判では勝っても、愛情の争奪戦では敗者であり、お金を得ても、他方の心は戻ってきません。


慰謝料をもらうことで、傷ついた心は真にいやされるのでしょうか。


不倫の相手方の不法行為責任を追及することで、泥沼の訴訟に相手を引きずり込むのではなく、夫婦できちんと問題処理をはかるほうが得策でしょう。


愛情の自由競争に破れたツケは、不倫相手より、

夫に対して請求すべきではないでしょうか。


最近では、夫婦関係が破綻した後に性的関係をもった第三者不法行為責任を負わない (最高裁1996 ·3· 26 判決)とか、不倫を誘発したり嫌がらせで慰謝料を請求することは認めない(最高裁1996 、6-18 判決)と、最高裁は責任を認める場合を限定しはじめています。


なお、夫婦の一方と関係をもった相手方への慰謝料請求権は、その不倫な関係を知ったときから消滅時効にかかることになります

(最高裁1994· 1·20判決)。


したがって、相手方との不倫を知って3年以上経ってからの請求は認められません。


もっとも、不倫な関係が続いているかぎりは、被害も続くわけですから、容認するような事情でもないかぎり、慰謝料請求は可能でしょう。


下記の本を参考にしました


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ