こんにちは。冨樫純です。
「群集心理と没個性化」についてのコラムを紹介します。
いじめ問題も、この群集心理が働いていると思いました。
フランスの社会学者、ルボン (LeBon, 1895) は、「群集心理」を著し、群集は衝動的で偏狭であり、常に道徳性に欠け、被暗示性、興奮性に富むとした。
おそらくフランス革命後の民衆による騒乱の集団行動に触発されたものと思われる。
彼のこうした主張は、民衆を知的に劣るとしたことから貴族主義的とされることがある。
この初期の群集行動の観察は、1950年代以降、社会心理学者たちの研究に受け継がれて、集団の没個性化の概念の発展へと導かれることになる。
とくにジンバルド(Zimbardo, 1970) は、不特定多数の集団行動における没個性化が、匿名性によって衝動的、非道徳的な行動に走るとして、次のような実験を行なった。
彼は、学習実験と見せかけて女子大生の実験者役が被験者役に電気ショックを与える場面を設定した。
実験者役は覆面をし、ダブダブの白衣を着て、氏名を相互に知られないようにする。
被験者役は(実際はショックを受けないのに)痛がって悲鳴を上げた。
この匿名性の条件のもとでは、実験者役相互が顔を出し氏名を紹介し合った対照群に比べて、2倍ほど強い電気ショックを与えたという。
しかし同じく匿名性の条件であっても、看護師の制服を着た実験者役は、 むしろ対照群よりも少ししか電気ショックを与えなかった。
特定の制服を着ることによって、陰に陽に制服によって与えられる社会的規範が、行動や信念に対して制約を与え、それによって集団同一性を増大させたと考えられる(Smith et al., 2003)。
一方、特定の集団同一性をもたない匿名の没個性化した集団は、攻撃者による攻撃を受動的に受け入れる傾向があり、往々にして攻撃者による非道徳的な無差別の攻撃に曝される可能性がある、という点にも注目しておく必要がある。
下記の本を参考にしました
『心理学』第5版補訂版
鹿取 廣人 他2名