とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

貯蓄率論争

 

こんばんは。冨樫純です。

 


「貯蓄率論争」に関するコラムを紹介します。

 


経済学の教科書的な内容ではないので、面白く読めると思います。

 


日本の貯蓄率が国際的にみてどのくらい高いかについては、最近論争が行われている。

 


日本の貯蓄率が国際的にみて高い1つの理由として、貯蓄の定義が国際的に異なることを重要視する議論がある。

 


すなわち、常識的に考えると、貯蓄とは所得のうち消費しない部分であるから、簡単に定義できそうに思われる。

 


しかし、所得とは何か、消費とは何かをきちんと定義しようとすると、現実問題としては暖味さが生じてくる。

 


たとえば、車やテレビなどの耐久消費財の購構入を例にとると、家計が消費するのは耐久消費財そのものではなく、それを保有することからくるサービスを消費すると考える方が、経済学的にはもっともらしい。

 


また、所得をどう定義するかも問題がある。現金化された通常の所得ばかりでなく、未実現の資本利得を所得の定義に含めることも可能である。

 


さらに、粗(グロス)の意味での貯蓄と純(ネット)の意味での貯蓄を区別することも重要である。

 


貯蓄は資産の増加を意味するが、資産が減耗する場合には、貯蓄をしても同じ大きさだけの資産の増加には必ずしもつながらない。

 


たとえば、家という資産が時間とともに摩耗していくときに、その摩耗をちょうど相殺するための修繕費用の積立金は、粗の貯蓄にはなるが、純の貯蓄にはならない。

 


資本減耗を時価で評価すれば、簿価(取得価格)で評価するケースよりも大きくなり、その分純貯蓄は小さくなる。

 


Hayashi (1986) は、日本の資本減耗の取扱いをアメリカと同様に時価に基づいて再計算することによって、日米間での貯蓄率の差を再検討している。

 


それによると、公表統計では10%程度ある日米間の家計貯蓄率の差は、7%程度に、また、国民貯蓄率の差は、15%程度から5%程度へと大きく減少する。

 


したがって、貯蓄をより厳密に定義すると、公表さているデータよりは、日本の貯蓄率は高くない。それでも、他の先進諸国よりはまだ高いことは確かであろう。

 


下記の本を引用しました。

『入門マクロ経済学』井堀利宏著  新世社