とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

情報の統合

こんにちは。冨樫純です。

 


哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル  

 


情報の統合

 


まず、最もわかりやすい例として「腹話術効果」を説明しよう。

 


その名の通り、腹話術を鑑賞するときに起きている錯覚である。腹話術では、腹話術師が持っている人形の口から声が出ているように聞こえるが、実際の声は腹話術師が出している。

 


もちろん、観客もそれを知っているが、それでも人形から声が聞こえてしまう。

 


腹話術師が口を動かさず人形の口が動いている様子を見ることで、声がする場所が変わってしまうのだ。

 


こうした錯覚はなぜ起こるのか。説明の鍵となるのは「情報の統合」だ。

 


腹話術の場合、聴覚情報と視覚情報に食い違いがある。聴覚では音は腹話術師の口から出ているという情報が得られるが、視覚的にはそうではない。腹話術師のロは動いておらず、むしろ、人形の口が動いている。

 


視覚では、音を出す出来事は腹話術師ではなく人形の方で起こっているという情報が得られているのである。

 


もちろん、実際に声を出しているのは腹話術師なのだから聴覚的な情報の方が正しく、視覚的な情報は誤っている。

 


しかし、私たちの知覚システムはそのように判断しない。

 


むしろ、視覚が正しく聴覚が間違っているという判断を下す。

 


その結果、視覚情報が優先され、音が人形の口の方から発せられているかのように聞こえ方が修正されてしまうのだ。

 


なぜ視覚情報が優先されるのか。その理由は、一般的に空間的な情報に関しては聴覚よりも視覚の方が信頼できるからである。

 


たとえば、ある地点Aとそこから一センチ離れた地点Bにそれぞれ爆竹が置いてあるとしよう。

 


そして、どちらか片方が爆発するとする。二つの

爆竹を見ているなら、どちらが爆発したか一目瞭然だ。

 


しかし、爆竹に背を向けてどちらが爆発したかを耳で当てるとしたらどうだろうか。簡単にはわからない。もちろん、この課題を何回も繰り返せば聴覚でも区別できるようになるかもしれない。

 


だが、視覚ではそうした訓練を積まずに難なく区別できる。

 


この例からわかるのは、視覚の方が聴覚よりも正確な位置情報を得られるということだ(専門的な言い方をすれば、視覚の方が聴覚よりも「空間分解能が高い」)。 

 


そうすると、空間に関する視覚情報と聴覚情報が食い違っている場合、視覚情報の方が正確である可能性が高い。

 


そのため腹話術の場合には視覚情報が優先され、音の聞こえ方が変化してしまうのである。

 


ちなみに、これとは逆の錯覚もある。 有名なのは「ダブルフラッシュ錯覚」というものだ。

 


これは、フラッシュが一回光るあいだに短い音を二つ聞くと、二回フラッシュしたように見えるというものである。

 


この場合には、一回光ったという視覚情報と二回音がしたという聴覚情報が比較され、聴覚情報が優先された結果、二回フラッシュしたように見えてしまう。

 


なぜこの場合は聴覚が優先されたかというと、短い出来事が何回起きたかという時間的な情報に関しては視覚よりも聴覚の方が信頼できるからだ。

 


腹話術効果の場合もダブルフラッシュ錯覚も、情報の統合の結果として錯覚(間違った知覚)が生まれてしまっている。

 


だが、情報の統合は間違いを生み出すためになされているわけではない。むしろ、通常ならうまくルールにしたがって行われる統合が、例外的な条件のために誤りを生み出しているのである。

 


そこで使われている統合の規則(空間なら視覚を優先、時間なら聴覚を優先)は、多くの場面ではうまくいくものであり、通常であればより正確な情報を得られるものなのだ。

 


以上のような多感覚錯覚をみると、私たちの知覚システムは普段から情報の統合を行っていることがわかる。

 


錯覚ではなく対象を正しく捉えている場合でも、それぞれの感覚は別々に情報を得ているのではない。

 


私たちが通常行っている知覚は、それぞれの感覚が協働する多感覚知覚なのである。

 


感想

 


「情報の統合」という現象が起こることを知りました。

 


おもしろい現象だと思いました。

 


下記の本を參考にしました

 


『美味しい』とは何か    

 食からひもとく美学入門

 源河 亨

 中公新書

 

flier(フライヤー)