こんにちは。冨樫純です。
「死刑」についてのコラムを紹介します。
死刑の威嚇効果に効果がないのであれば、存在させる理由がないし、被害者やその遺族の復讐的な感情は別の方法でケアすればいいと思いました。
最高裁は憲法36条で禁止される 「残虐な刑罰」には当たらないとしているものの(最大判 1948 [昭23]·3·12刑集2巻3号191頁)、死刑は、規範的予防を重視する現代の刑罰論からは、異質な
ものとなりつつある。
それどころかドイツでは、1977年に憲法裁判所において、仮釈放の可能性のない終身刑すら憲法違反とされたのであって、死刑に限らずおよそ受刑者の社会復帰を前提としないような刑罰は、しだいに縮小される傾向にある。
死刑や拷問の廃止を目指しているNGOアムネスティインターナショナルの調査によれば、死刑廃止国は、10年以上執行されていない事実上の廃止国を含めて、2009年にはすでに139にのほっている。
死刑存置の最大の論拠は、死刑は威嚇力が大きく殺人などの凶悪犯罪の予防に不可欠であるというものである。
ところが、諸外国の比較では、凶悪犯罪の発生率は死刑の有無で顕著な差をみせていない。
逆に、刑事政策的には、死刑廃止国が死刑になる可能性のある重大事件の被疑者を死刑存置国に引き渡さないとする政策をとっており、死刑廃止国に逃亡した犯罪者を処罰できないというデメリットを生んでいる。
ヨーロッパでは、死刑制度を維持している国は EU に加盟できず、ヨーロッパに隣接した死刑存置国は、経済統合の面で不利な立場に立たされている。
もっとも、死刑には被害者やその遺族、さらには社会の応報感情、凶悪犯人はその命を奪われて当然であり、肉親を殺され惨めな生活を強いられている立場からみれば、たとえ刑務所のなかであっても生ているのは耐えられない、という感情を満足させるという機能もある。
しかし、被害者やその遺族は、加害者への憎しみの感情によってかえって自分自身の精神的な傷を深くするという事実もある。
したがって、死刑廃止国では近年、被害者ないし遺族の生活保障や心理的ケアにも力を入れている。
下記の本を参考にしました。
『はじめての法律学』HとJの物語
松井 茂記 他2名
有斐閣アルマ