とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

刑罰を受けない人々

こんにちは。冨樫純です。


「刑罰を受けない人々」についてのコラムを紹介します。


心神喪失者が刑罰を受けないことはテレビドラマなどを見て知っていましたが、それ以外にもいることを学びました。


①責任無能力者


行刑法では、精神の障害を理由とする心神喪失者や14歳未満の少年(少女を含む)は、「犯罪」の主体とて刑罰を受けることはない(刑 39 条1項·41 条)。


これらの人々の逸脱行動に対しては、刑罰は適切な対応手段ではないからである。 これらの人々

を「責任無能力者」という。

 

心神喪失者の場合


精神の障害を理由とする心神喪失者の逸脱行動に対処するには、懲罰的手段ではなく、行動の原因となる障害を除去することが最も有効である。


そこで、自分を傷つけたり他人を害したりするおそれのある精神障害者に対しては、現行法は、強制的な入院と治療の制度を予定している (精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 29条以下にもとづく都道府県知事による措置入院や、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による通院 入院処遇)。


なお、心神喪失とは、精神の障害により行為をやってよいかどうかの判断ができないか、あるいはやってはいけないとわかっていても自分の行動を抑えることができない場合をいう。


これに対して、精神の障害により行為をやってよいかどうかの判断能力が著しく減退しているか、あるいはやってはいけないとわかっていても自分の行動を抑制する能力が著しく減退している場合は心神耗弱と呼ばれ、刑が必ず減軽される(刑 39条2項)。


③少年の場合

 

刑法は14歳未満の少年を処罰しないとしている。もっとも、実際には、20歳未満の未成年者が通常の刑罰を受けることは稀である。


そのかわりに、罪を犯した少年ないし14歳に満たないで刑罰法規に触れる行為をした少年や将来罪を犯すおそれのある少年(これらを総称して非行少年という)に対しては、少年法が「保護処分」を予定している。


これは、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する」ものであって (1条)、具体的には、保護観察所の保護観察に付したり児童自立支援施設·少年院などへ送致することをいう(24条)。


「保護」とは、 少年を非行にかりたてる性格や環境からの少年の「保護」 である。


決して、少年を甘やかせる趣旨のものではない。


少年に対してこのような特別な制度が用意されているのは、少年は環境の影響を受けやすく、また性格の矯正も容易なので、懲罰的な制裁よりも、教育的な措置のほうが、将来の犯罪の防止に有効だからである。


逆に、少年に成人と同じ刑を科したら、具体的には成人犯罪者と同じ場所に入れたら、そこで暴力団とのつながりができたり、あるいは受刑者の虐待の対象になったりすることなどで犯罪性を深めることになり、かえってろくなことはない。


したがって、少年の事件に対しては、犯した結果の重大性に目を奪われて重罰を求めるような態度は慎まなければならない。


④女性による売春の場合


売春防止法は、刑罰に代わる強制措置を規定している。


すなわち、同法は、売春の勧誘などを処罰するとともに、このような罪を犯した成人の女性に対して、懲役または禁鋼の刑の執行を猶予するときは、その者を婦人補導院に収容し、更生に必要な補導を行う「補導処分」 に付すことができると規定しているのである (17条)。


また、同法は婦人相談所を設けて、女性の保護更生をはかっている (34条以下)。これは、対象となる女性に売春以外の合法的な方法で生計を立てる可能性を開かせることによって売春の防止をはかることを目的としたものである。


下記の本を参考にしました。


『はじめての法律学』HとJの物語

  松井 茂記 他2名

  有斐閣アルマ