こんにちは。冨樫純です。
独学で、政治学を学んでいます。
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
機関委任事務をめぐる論争
そもそも機関委任事務や法定受託事務の制度およびそれに関する裁判の制度は、国が全国統一的な政策を進めるために用意されてきた制度である。
国の仕事の多くを地方自治体が実施しているために地方自治体といっても、自治とは名ばかりであると指摘されてきた。
第1に、機関委任事務は日本の中央政府と地方自治体とを上下関係においているから問題であるらという指摘があった。
それは次のように論じられる。
保育所行政の場合、どのような基準でどのよう
な保育サービスを行うかを中央省庁が全部決めてしまっている。
しかし、どのような保育需要があり、どの需要にどれだけ応えるべきかは地方地方に任せる方が望ましい。いちいち中央省庁の指示を受ける必要はない。
第2に、地方の仕事に占める機関委任事務の割合が非常に高い、という指摘があった。
一説には、都道府県の場合の 70%、市町村の場合でも40%はこの機関委任事務が占めていたといわれる。
その内容は、まちづくりから、福祉、環境行政など多方面にわたる。
パスポートを申請するときに必要な戸籍謄本の管理も、機関委任事務である。
戸籍事務は国家が国民を把握するために行っているのである。
機関委任事務に対するこのような批判は、これまで繰り返しなされていた。
そこで機関委任事務制度は廃止されたのである。
しかし、機関委任事務があったからといって、ただちに日本は中央集権的であったといえるかというと、 厳密には難しい。
機関委任事務であっても、実際に仕事をするのは地方であるために、そこには一定の自由度・裁量があったとする主張もあるからである。
たとえば、保育所をどれだけつくり、どのようなサービスを提供しているかについては、市町村によってかなりの差異がある。
厚生省(現厚生労働省) が国の方針に従うように地方自治体を監視しているといっても、何人の保育園児に対して1人の保母をつけるか、延長保育や乳児保育 障害者保育をどの程度行うかは、結局は市がその分野にどれだけ力を入れるかによって違ってくるからである。
その市の行政をあずかる市長は、国の機関である以前に、住民によって選ばれた市の代表である。
国の顔色ばかりうかがっているわけにはいかない。そんなことをすれば、次の選挙で落とされてしまうかもしれないのである。
国がなんといおうと、住民の多くが保育所を充実してほしいと強くいえば、それに応じざるをえなくなるのである。
感想
地方自治体の多くは自治的ではないと否定的に捉えていますが、実際は指示に従う方が楽だと考える自治体もあるのではないかと思いました。
下記の本を参考にしました
『はじめて出会う政治学』
構造改革の向こうに
北山 俊哉 他2名
有斐閣アルマ