こんにちは。冨樫純です。
独学で、政治学を学んでいます。
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
国は地方に仕事をさせている
パスポートを発行するのはどう考えても国の仕事、外務省(大臣) の仕事であり、パスポートにもそう書かれている。
しかし、実際に発券するのは都道府県の地方自治体の仕事になっている。
このような現象が起こるのは、 パスポートの発行の仕事が国から地方に委託されているためである。
自治体が行っている仕事には2通りある。1つは、自治体が自分の事務として行うもので、これを自治事務という。
ゴミを収集したり、消防活動を行ったり、教育を行ったりすることがその例である。
もう1つは、国が地方自治体に委託する場合である。本来、国が果たすべき仕事であるが、その適正な処理をとくに確保するため法令によって自治体が処理するのである。 これを法定受託事務という。
以前には、知事や市町村長などを国の下部機関として扱って、これに委任するという機関委任事務というものがあった。
これに対しては、中央 (国)と地方との関係を上下主従の関係に置いているとして批判が強かった。
法定受託事務はそれに代えて新設されたもので
ある。 機関委任事務の45%がこれに代わったといわれる。 残りはほぼ自治事務となった。
パスポートの発券は、この区別に従っていうと、法定受託事務の方に入る。
外務省が都道府県に対して旅券の発給を委託しているのである。地方自治体には、「住民のために自らの事務を行う機関」と 「本来国が果たすべき事務を行う機関」という、2つの役割があるといえるだろう。
10年有効のパスポートを申請するには1万6000円かかる。以前はそのために収入印紙を金額分買うことになっていた。
1989年からは、都道府県収入証紙 (2000円)と国へ入る収入印紙 (1万4000円)とを別々に購入することになっている。
といっても1万6000円を払うと、その2つが出てくるという仕掛けである。こうして都道府県には、パスポートの発行1枚ごとにそれだけのお金が入ることになっているわけである。
それでは、知事などが法定受託事務を実行するのを拒否した場合はどうなるのだろうか。
ある知事が、県民は 「宮崎をどげんかせん」といかん」 外国などに行っている場合ではないと考え、パスポートの発行を拒否し始めたとしたら、どのようなことが起こるのだろうか。
国がどうしても発行させたいと考えたときに、踏むべき手続きはかなり念が入っている。
腹を立てた外務省がいきなり自分でパスポートを発給するわけにはいかないのである。
まず、知事が法定受託事務を適切に実施しないために、公益が侵害されていると判断したとき、主務大臣、ここでは外務大臣は宮崎県知事に対して実施するように勧告を出す。
最初は 「やった方がいいですよ」というのである。 それでも実施しないとき、大臣は指示を出す。
今度は「やれ」というのである。 この指示にもまた従わなければ、裁判所に対してその実行を命ずる旨の裁判を請求することになる。
この裁判所が国のいい分を認めた場合、今度は裁判所が 知事に「やれ」という。それでも従わなければ、外務省は自分でパスポートを発行することができるのである。ようやく「外務大臣がやる」 といえるのである。
感想
国と地方は上下関係だというイメージが今も強いと思いました。
下記の本を参考にしました
『はじめて出会う政治学』
構造改革の向こうに
北山 俊哉 他2名
有斐閣アルマ