こんにちは。冨樫純です。
「会話の公理と言語行為」についてのコラムを紹介します。
会話の公理という理論がおもしろかったです。
普段から心がけたいと思いました。
言語哲学者のグライス(Grice, 1975)は、会話文の意味を正しく理解するためには、文字どおりの意味と言外の意味とを区別する必要があり、文字どおりの意味が伝達されるためには、
①量の公理(必要な情報はすべて提供する。必要以上の情報の提供は避ける)、
②質の公理(偽りと考えられることは言わない。十分な根拠のないことは言わない)、
③関係の公理(無関係なことは言わない)、
④様態の公理(わかりにくい表現は避ける。曖昧な表現は避ける。できるだけ簡潔な表現にする。秩序立った表現にする)
という会話の公理を満たさなければならないと考えた。
たとえば、スーパーの店員が「奥さん、この鯖おいしいよ。ほんとうにおいしいよ。とってもおいしいんだから」と客に鯖を買うように勧めたとしよう。
しかし、あまりにしつこく勧めると(「量の公理」に反すると)、「ほんとうはおいしくないのかもしれない」と思われてしまうかもしれないであろう。
また、父親が日頃あまり勉強しない息子に向かって、「おまえはほんとうによく勉強するね」と言ったとすれば(「質の公理」に反すると)、この発話は「皮肉」と受け取られるはずである。
さらに、「あなたにさっき若い女の人から電話があったわよ」という妻の言葉に、夫が「今夜の料理とってもおいしいね」と答えたとしたら(「関係の公理」に反すると)、妻は夫が何か隠しごとをしていると疑うに違いない。
ところで、これらの会話文は、たんなる事実の陳述ではない。
話し手は、客が錆を買うように、あるいは息子がもっとまじめに勉強するように要求しているのである。
このように日常会話では、しばしば、聞き手に何かを要求するとか、聞き手の要求を拒絶するとか、何らかの目的や意図のもとに発話がなされ
る。
つまり、この場合の発話は、言葉によって要求や拒絶といった行為を行っている。
このため、サール(Searle, 1969)は、こうした目的や意図のもとになされる発話を言語行為と呼んだ。
下記の本を参考にしました
『心理学』新版
無藤 隆 他2名