こんにちは。冨樫純です。
「健忘症」についてのコラムを紹介します。
健忘症になったら、学習の他に何ができなくなるのかという疑問が残りました。
H.M. 氏は脳の手術を受けるまでは何ら記憶の障害はなかったし、学校の成績もよい方であった。
しかし、たびたびてんかんの発作を繰り返した。
さまざまな治療を施したにもかかわらず、発作はしだいに激しくなり、頻度も増加した。
そのため、やむをえず、彼が27歳のときに左右の側頭葉の外科手術を受けた。
手術自体は成功であったが、彼は重い記憶障害に陥っていることがわかった(このため、この種の手術は現在では行われない)。
幼い頃のことは鮮明に記憶しているし、会話も普通に行うことができた。
知能テストの結果もとくに異常はなかった。
ところが、手術後の出来事を何1つ覚えておくことができないのである。
古くからの友人の名前などは正確に覚えているのに、新しく出会った人の名前は、どうしても覚えられなかった。
だから同じ雑誌を毎日繰り返し読んでも、おそらく永遠に飽きることはないだろう。
簡単な数字を呈示してそれを記憶させる短期記憶課題などは普通にできた。
ただ、その数字を長く記憶に留めておくことはできなかった。
しかも、そのような課題を行ったことさえ覚えておくことができないのである。
これはミルナー(Milner, 1970) が報告した健忘症(順向性健忘症)の典型的な症状を示している。
このタイプの健忘症では、新しく経験したことを長期記憶に留めておくことができない。
そのため、何かを学習するということは不可能である。なぜなら、学習を定着させるためには、訓練や練習で学んだことを長期記憶に留めておく働きが不可欠だからである。
下記の本を参考にしました
『心理学』新版
無藤 隆 他2名