こんにちは。冨樫純です。
「少年キャンプでの葛藤実験」についてのコラムを紹介します。
共通の敵を作ると仲良くなれると言われますが、ここから来ていると感じました。
集団間葛藤の実態を、リアルに例示したことで有名なのが、シェリフらによるフィールド実験である(Sherif et al., 1961)。
1954年の夏、オクラホマ州の泥棒洞窟(Robbers Cave)とよばれるキャンプ場へ、11歳の少年たち24人がやってきた。
引率した大人たちは、この研究のために入念にトレーニングされたスタッフだった。
出発前から少年たちは、2つの班に分けられた。
さっそく彼らは、自分たちの班に「イーグルズ」「ラトラーズ」(ガラガラ蛇)といった勇ましい名前をつけてアイデンティティーを形成する。
キャンプ場で共同生活をするうちに、各班の中には「集団」としての構造が生まれる。
そこで次にを設定されるのが、集団の間に葛藤が発生する様子を観察する段階である。
ここで特に注目を集めたのが、競争的な相互依存関係の影響である。
班対抗の、綱引きや「テント張り競争」、それに野球の試合といいった、競争的関係を導入することで、2つの集団の間には容易に敵対意識が生まれる。
たとえば少年たちは、相手方の宿舎に奇襲攻撃をかけたりし始める。
キャンプ途中で実施した質問紙調査では、外集団は「乱暴」で「ずるい」といったステレオタイプや、内集団のほうが何かにつけて優れているといった内集団バイアスが観察された。
次に、葛藤解決のための方策が検討された。
まずは敵対する集団同士を近づけて、交流の機会を増やすことが試みられる。
しかし、これではかえって逆効果となることが明らかになる。
仲の悪い集団同士を近づけても、花火大会の場
は文字どおり「一触即発」、食堂はフード・ファイトの戦場と化すだけだった。
最後にシェリフたちが示したのは、上位目標(superordinate goal) を導入することの重要性だった。
これは、2つの集団が協力してはじめて達成できるような目標のことである。
具体的には、両方の集団にとっての「共通の敵」が導入される。
まず少年たちは、貯蔵タンクの故障による水不足という、全員に関わる問題に直面する。
さらに、食料を運ぶトラックが立ち往生すると、両方の集団から動員された者たちが、ロープで引っ張るという作業に参加する。
つまり、かつては競争の象徴だった綱引きが、今度は2つの集団の協力作業へと変わったのである。
いうまでもなく、上位目標を達成した後で行った調査では、外集団に対する態度も飛躍的に向上し、相互の友好関係が確認された。
集団間に敵意と偏見が生まれる過程、そしてその有効な解消方法を突き止めようとした初期の試みとして、永く人々の記憶に残る研究となるであろう。
下記の本を参考にしました
『社会心理学』
池田 謙一 他2名