こんにちは。冨樫純です。
「ステレオタイプ脅威」についてのコラムを紹介します。
タイトル通りに脅威だと思いました。
もしかすると、知らず知らずのうちに、このようなステレオタイプ脅威を受けているかもしれないと思いました。
自分の集団への偏見によって成績が上下するステレオタイプ内容モデル(Fiske et al. 2002)も強調するように、偏見やステレオタイプの多くは「能力」に関わるものである。
たとえばアメリカ社会では、黒人は全般に学業成績が悪いと多くの人が思っている。
こうしたステレオタイプを、その集団の成員が意識すると、実際にそれを裏づけるかのように成績が低下するというやっかいな現象がある。
ステレオタイプ脅威(stereo-type threat)とよばれるものである。
つまり、ステレオタイプの活性化による影響は知覚者の側だけでなく、ステレオタイプの対象となる集団の成員も受けるのである。
これが原因でますます努力の意欲をなくし、さらに成績低下を招くといった悪循環が起こる可能性が大いにある。
スティールとアロンソンの有名な実験(Steele & Aronson, 1995)では、黒人学生にかなり難度の高い数学の問題が与えられた。
すると、これが知能を測ることのできるテストだと伝えられた条件では、知能と無関係だと伝えられた条件に比べて、目に見えて成績が低下した。
同様の効果は、同じように学業について偏見をもたれている他の少数者集団についても報告されているし、「女性は数学が苦手」「高齢者は物覚えが悪い」などのステレオタイプについても起こる。
それどころか、数学を専攻とする白人学生でさえ、「アジア系学生の数学能力を確かめるため」と称して難問を与え、白人の相対的な劣位性を示唆すると、やはり成績が低下したという(Aronson et al., 1999)。
つまり、本当は得意なはずの課題でも、苦手かもしれないという不安を与えただけでステレオタイプ脅威は起こりうるのである。
逆にいうと、「大丈夫、できる」という確証を与えると成績は回復する可能性をもっている(Martens et al., 2006)。
下記の本を参考にしました
『社会心理学』
池田 謙一 他2名