こんにちは。冨樫純です。
「酒税」についてのコラムを紹介します。
税金の中には使い道がよくわからないものがあると思います。
その一つが酒税だと思いました。
全国小売酒販組合中央会という組級がある。
「全国の酒屋さんの組合」である。
1953 (昭和28)年に設立されて以降、さまざまな活動をしているが、その目的は、まちの酒屋さん」の利益を守り、促進することである。
日本全国の酒屋は自分たちの共通の利益を守るために、この組織にかかわっている。
その数は約13万軒である。
ただし、 酒屋が直接、全国的な組織である中央会をつくっているわけではない。
酒屋はまず市町村単位で「単位組合」を組織している。
次に、単位組合は各都道産県レベルで「連合会」を組織し、最後に連合会が全国レベルで「中央会」を組織しているのである。
単位組合はその地域(市町村)の多くの酒屋の利益促進のために働く代理人であり、連合会は都道府県内の多くの単位組合の利益を促進する代理人であり、そして中央会は全国の連合会の利益を促進する代理人である。
酒屋にとって共通の目的とは何か。
いくつかあるだろうが、最も重要なことは免許制度を維持することである。
酒屋は税務署から免許を得て、その地域では独占的に酒を販売している。
このしくみを維持することが最も重要なのである。
なぜ免許制度をとっているのか。
次のように説明されている。
酒には高い税金がかけられており、酒税は所得税と法人税にならぶ国の大きな財源である。
税金を負担するのは消費者であるが、それを税務署に納めるのは酒屋である。
そこで、税金を集める国の側として心配しなければならないのは、第1に、酒屋が客の支払った税金をインチキをして自分の懐に入れずに、きちんと納めるだろうかということである。
第2に、これとは反対に、酒屋が客の負担すべき税金の一部を自分で負担して、その分だけ安く酒を販売しないだろうかということも、心配である。
多くの酒屋が値下げ競争に突入していくと、共倒れになってしまうかもしれない。そうなれば、やはり予定された税金が集まらなくなってしまう。
このように個々の酒屋がインチキをしたり値引きをしたりして儲けを増やそうとし、その結果、予定された税金を納めなくなる事態を避けるために、つまり徴税を確実にするために、国は一定の条件を満たしたものだけに免許を与え、酒類の販売を認めているのである。
このように、免許制度は徴税を確実にするという「公共の利益」のためにあるとされるわけであるが、それは同時に酒屋という業種の「私的な利益」を守るものでもある。
免許制度のおかげで既存の酒屋は、近所にライバル店ができるのを心配することなく、余裕をもって営業することができるのである。
ところが、いま酒屋の免許制度が大きく揺れ動いている。
あらゆる分野で規制緩和が検討され、進められており、酒の免許制度もまた規制緩和の対象になっているのである。
免許を与える重要な条件として、2種類の需給調整基準があった。
既存の免許を持っている販売店との距離を一定以上あけなければならない「距離基準」と、その地域の人口に応じて免許枠をつくる「人口基準」である。
そして、距離基準は、2000(平成12)年9月に廃止され、人口基準も2003年9月に撤廃された。
こうして、法律で決められた要件さえ満たせば、原則としては自由に免許を取得することが可能になった。
免許制度によって守られていた酒類流通にとって、重大な改革である。
下記の本を参考にしました