こんにちは。冨樫純です。
「途上国のエイズ解決策」についてのコラムを紹介します。
目をそらしてはいけないような、途上国の厳しい現実を垣間見ました。
現在の世界は、地球環境汚染、人口爆発、絶対的貧困などグローパル・イシュー(地球規模問題群) と呼ばれる多くの問題をかかえている。
中でも、 国境を越えて広がる伝染病はその一つである。
特にエイズ (AIDS) の問題は深刻である。
2000(平成12)年末現在で約3610万人もの人々がHIV (エイズウィルス)感染者であり、2000年のエイズによる死者は300万人を数える。
エイズは、先進国、発展途上国を問わず感染の広がりが見られ、現在の世界がかかえる最も深刻な感染症といえる。
しかしながら、エイズの感染状況を見ると、発展途上諸国の状況はより深刻である。
中でも、サブサハラ (サハラ砂漠以南)のアフリカ諸国では、HIVの感染者とエイズ患者数は合わせて 2500万人を超えており、成人人口 (15-49歳)に占める感染者の割合は実に9%近くに達している。
また、先進国ではエイズ患者の生活の改善や治療楽による治療が施されているのに対し、発展途上国では、そのような治療を受けられる人々の数はきわめて限られている。
エイズ治療薬の高価格が貧しい国における貧しい人々の治療を阻んでいるのである。
発展途上国は、このような状況をどのように改善できるだろうか。
国家予算が限られた発展途上国では、政府がエイズ治療薬を輸入し患者に配付することは困難である。
実際に発展途上国がとった解決策は、先進国の製薬会社が開発したエイズ治療薬のコピー薬の製造や販売を認めるという政策であった。
たとえば、ブラジル政府がコピー薬の製造を容認したり、南アフリカ政府が国家の非常事態として、治療薬のコピーの製造・販売が行えるよう薬の特許保護を制限できる法改正を行ったりした
のである。
このような発展途上諸国による政策に対して、新薬の開発に巨額の費用を投じている先進国の製薬会社は、コピー楽の製造・流通による治療薬の値下がりによって開発資金の回収が困難になるとして反対しており、またそのような製薬会社をかかえる先進国政府も、コビー薬の製造は治療薬の特許という知的所有権を侵害しているとして批判的である (発展途上国側は、先進国の製薬会社に人道的授差助を求めており、アメリカ政府がブラジル政府をWTOに提訴した事例では、アメリカ政府の譲歩により和解が成立し、また製薬会社が南アフリカ政府を憲法違反訴えた事例では, 製薬会社側の大幅な譲歩により和解にいたった)。
2002年WTOは、途上国に安いコピー薬の輸入を認める制度づくりを行うことで合意した。
ここでとりあげたエイズ治療楽の製造・販売をめぐる先進国、途上国、企業の関係は、それぞれの主張が対立している場合、間題の解決 (エイズ患者の削減と治療)をどのように行えばよいか、国際制度の果たす役割は何か、という問題を投げかけている。
グローバルな課題に対し国によって対応可能な手段が異ならざるをえないこと、知的所有権保護のような自由な経済活動を保障するグローバルな一定のルールのもたらす影響が国によって異なること、などが問題を複雑にしているといえるだろう。
下記の本を参考にしました
『政治学』補訂版
(NewLiberalArtsSelection)
久米 郁男 他2名
有斐閣