とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

現代日本の女性労働

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル  現代日本の女性労働

 


現代では「自然」のように思われている「男が外で働き稼ぎ、女性は主に家庭のことをする」という性別役割分業も、この仕組みが日本社会に定着したのは、高度成長の時代以後のことといわれる。

 


というのも、農業や自営業を軸にした産業の仕組み(ここでは女性は基幹労働力だった)が、工業化のなかで変容を遂げ、その結果、労働における性別役割分業が大きく拡大したからだ。

 


そのことを典型的に示すのが、いわゆるM字曲線である。

 


つまり、20代半ばまで、7割以上ある女性の労働力率(就業者の割合)が、20代後半から30代にかけて減少し、40歳前後で再び上昇するようになるのである。

 


全体を見ると、30代で谷を描き、ちょうどアルファベットのMに似ていることから名づけられた。

 


もちろん、この曲線の背景には、子育てによる女性の離職がある。

 


また、40歳前後での再上昇も問題を含んでいる。

 


というのも、この上昇分の多くは、労働条件の

悪いパート労働などだからだ。

 


もちろん、工業化の進んだ多くの国々の女性の労働力率も、かつてはM字曲線を描いていた。

 


しかし、現在では、30代に谷のできない(一度就業した女性も働き続ける)、男性と同じようなかたちを描く国がほとんどになっている。

 


にもかかわらず、日本社会においては、このMの谷の上昇は、まだ不十分なままである。

 


それなら、家庭にいる女性たちは「働きたくない」のだろうか。じつはそんなことはないのだ。

 


政府の調査によれば、現在は主婦として家庭にいるが機会があれば働きたいと考えている女性は、かなり存在している。

 


これに現在働いている女性を加えると(これを潜在的労働力率という)、日本でも現在のスウェーデン並みの女性が働く社会になるのだ。

 


働きたいと思っているのに女性たちが働けないという点(労働と出産・育児が両立できない状況や、「女性は家庭に」という社会からのプレッシャー、さらに、女性の労働条件の悪さなど) にこそ、日本社会が抱える課題があるのだ。

 


しかし、他の国と比べて日本社会は、伝統的に女性の社会参加が低い国だったのだろうか。

 


よく調べてみると、そうではないことがわかる。たとえば、 『少子化男女共同参画に関する社会環境の国際比較』(2005年9月)という内閣府のレポートによれば、1人あたりGDPが1万ドル以上ある24カ国のなかで、1970年における女性の労働力率は、日本はフィンランドに続き第2位であり、 3位スウェーデンより少し高い。

 


つまり、かつて日本は、経済の発展した諸国のなかでも、女性の労働参加率がきわめて高い国の一つだったのだ。

 


それが、2000年になると、20位と、女性の労働参加が低い国になってしまう。

 


なぜ、こうなってしまったのだろう。おそらく、ここには、1970年代以後の日本社会におけるジェンダーにもとづく分業の仕組みの変化があるのだろう。

 


つまり、男性労働者がより長時間労働に従事する仕組みがすすむ一方で、女性たちは主に家事・育児などを分担し、働く場合も低賃金のパート労働(非正規労働力)につくという構造が、ますます拡大・固定化されてきたということである。

 


他の経済の発達した諸国は、1970年代以後、急速に女性の労働参加の枠を広げた(そこには、1960年代の女性運動の影響や、国連やILOなどによる労働におけるジェンダー平等の大きな動きがあった)。

 


しかし、日本においては、むしろこの30年ほどの間に、労働における男女間の格差は、縮むどこ

ろか拡大しているようにさえ見える。

 


たとえば、男女間の賃金格差(男性100に対して女性は60ちょっとという割合でしかない)は、今や世界でも稀なほど大きい。

 


また、女性の管理職割合も10%弱でしかない。

 


すでに管理職の男女比が半分半分に近い国もめずらしくない状況のなかで、日本の女性管理職割合の低さ(じつは、この数字は発展途上国の平均よりも低い) は、驚くべきものだ。

 


急激に進行する市場中心のグローバリゼーションは、日本社会ばかりか国際的レベルで労働環境

を大きく変えようとしている。つまり、一部の「富める層」「強者」と、多数派を占めることになる労働条件の悪い不安定な生活を強いられる「弱者」との分離の進行である。

 


なかでも、女性は、これまでも労働市場においてより弱い立場におかれてきたため、労働市場に駆りだされても、パートや派遣などのより条件の悪い領域に囲いこまれやすい(もちろん、一部には「強者」の女性層が増加することだろう。他方、今後は、男性もまた、弱い不安定な立場の層が増大する可能性がある)。

 


現在の労働と分業をめぐる鍵は、こうしたジェンダーを媒介にした「強者」と「弱者」の構図の拡大を、いかにしてより「平等」で「人間らしい」関係に転換していくかということだろうと思われる。

 


感想

 


日本の女性が働きにくいのは、自身の問題というより、社会の問題、もっといえば、企業の問題だと改めて思いました。

 


下記の本を参考にしました 

 


ジェンダーで学ぶ社会学』  

 伊藤公雄 牟田和恵編著

 世界思想社

 

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