とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

現代哲学の根本的な問題

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、倫理学を学んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル  

 


ウィリアムズと現代の哲学の根本的な問題

 


現代の倫理は自分の個性を大事にしよう、自分に正直であろう、他人とは違うあなたの個人的な気持ちを大事にしよう、と「自分」を強調する傾向にあります。

 


「今のこの私」を中心とする考え方は、「いつでもどこでも誰にでも」がキーワードの「客観的な」真理、正解とは相性の悪いものです。

 


自分自身を中心として、今のこの私の手の届く範囲で、私らしいやり方で、私の好きな人々を幸福にする、それで十分。 それが正解かどうかなんてわからない。 このタイプの倫理において大事なのは「個性の発揮」です。

 


イギリスの哲学者バーナード・ウィリアムズ(1929-2003)は、こうした客観的な真理と個人的に大切なものの相克を生涯の研究テーマにしてきた人物でした。

 


ローティは彼のことを、(2002年当時)存命のイギリスの哲学者のなかでもっとも偉大な人物であり、誰よりも深く、誰よりも正当に、仲間たちの賞賛を集めてきた哲学者、と書き残しています。

 


ウィリアムズはオックスフォードでヘアを指導教員として教育を受けましたが、思想的にはフットやアンスコムマードックから強い影響を受け、後にはヘアを徹底的に批判する立場をとりました(ヘアは晩年の回顧録においてウィリアムズを、自分の弟子にしてもっとも手強い批判者と評しています)。

 


特にアンスコムからは、哲学は勉強ができるとか頭がいいとかいうことだけではできないものだということを学んだと述べています。

 


デカルト論からオペラについての論考まで、様々な著作を発表したウィリアムズですが、その遺作はTruth and Truthfulness (2002) というタイトルの本でした。 その冒頭部で彼は次のように述べます。

 


現代の思想と文化には、非常に顕著な二つの理想の潮流がある。一方には、信実に対する強いコミットメントがある。......しかしながら、この信実への要求とともに、真理それ自体への疑いもまた同じように拡がっている。(同書1頁)

 


ウィリアムズによれば、私たちの心の中には騙されたくない、嘘をつかれたくない、本当のことを知りたい、という強い気持ちがあります。

 


それゆえに、人々は互いに本当のことを偽りなく語ろうとすること、すなわち信(truthfulness) という態度を求めます。

 


しかし、その一方で、真理などどこにも存在しないのではないか、と強く疑っています。 この疑いは、真理の探究よりも、自分らしさを表現することの方がより重要だという考えを人々に抱かせます。

 


このように、一方で真理を求め、 他方で真理を疑っているのが、私たちの置かれた状況です。

 


感想

 


客観的な真理と個人的に大切なものの相克は研究テーマとしておもしろそうだと思いましたが、難しいテーマだとも思いました。

 


下記の本を参考にしました

 


『「倫理の問題」とはなにか』

 メタ倫理学から考える

 佐藤岳詩著

 光文社新書

 

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