とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

3歳までは父の手で

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル  

 


"男としてのアイデンティティ〟と「父親」

 


「父親論」は、〈男性学〉にとっても、避けて通れないテーマの一つである。

 


アメリカ合衆国の〈男性学・男性運動〉のグループ、なかでもR・ブライらの精神主義派のグループは、中心課題を、「性別役割意識からの解放」というよりも、むしろ、「傷つきやすい男性アイデンティティの回復」に設定する傾向が強い。

 


彼らは、父親問題を、男性性の回復にとって重要

な課題として位置づけている。

 


つまり、〝現代の男性の不安〟や〝男性としての傷つきやすさ”の原因を、幼年期における父親とのコミュニケーションの不足に見いだしているのである。

 


すなわち、男としての自己のアイデンティティ形成期において、そのモデルともなるべき父親の実質的不在が、成長後の自信のなさや不安、傷つきやすさを生じさせると彼らは主張しているのである。

 


そして、男としてのアイデンティティの回復のためには、心理的に母親から離脱し、改めて父親との深いコミュニケーションを試みるというのが、自己回復のための彼らの方法なのだ。

 


彼らの目指す 「男としてのアイデンティティの回復」という方向は、ぼくは個人的に大いに疑問があるのだが、この運動が、それなりの有効性をもっていることは認めなければならないと思う。

 


というのも、現代社会において、子どもたちにとっての安定した自己イメージ形成の場が失われているということは、まぎれもない事実だからである。

 


子どもたちの個性や協調性は、ほんらい、複数の個性との深いコミュニケーションを通じて形成されるものだろう。

 


ところが、核家族化にともなう家庭の教育力の低下と、地域共同体の崩壊による地域の教育力の弱体化は、子どもたちと大人たちとの密接なコミュニケーションを奪い、子どもたちに十分な自己形成のチャンスを与えないという結果を生んでいると思われる。

 


こうした核家族(実態は母=妻のみ)による子育ては、子ども、とくに男の子にとって、多くの問題を生みだす可能性がある。

 


現実に、いわゆる「少年非行」 (少年による社会的逸脱行為)、なかでも「重大事件」として社会的に問題になった事件の事例などを追っていくと、少年たちの成育において、父親の育児・教育不参加、あるいは父親の子どもへの過剰な暴力といったケースが多いことに気づかされる。

 


ある心理学者の実験に、父親が積極的に子育てに参加した生後6ヶ月の赤ちゃんと、母親だけが育児を担った同じ生後6ヶ月の赤ちゃんとを、見知らぬ他人にダッコさせるという実験があったそうだ。

 


その結果は、父親が積極的に子育てにかかわった赤ちゃんの方がはるかに動揺が少なかったという(ジョン・ニコルソン『男は女より頭がいいか』 村上恭子訳、講談社)。

 


他にも、父親が積極的に子育てに参加することが、子どもの発達にプラスに作用するという調査はいくつかある。

 


たとえば、服部祥子さんと原田正文さんたちによる、大阪における2000人の子どもの6年間にわたる調査によれば、「父親の育児参加・協力」が子どもの発達にプラスに作用していること、逆に「母親の就労は子どもの発達に影響を与えない」といった結果が導きだされている。

 


ぼくも、最近は、あちこちの講演などで”3歳までは母の手で"ではなくて、”3歳までは父の手で〟が重要です」と呼びかけるようにしている。

 


アメリカの男性運動の一部が主張するような、「男性的な父親」というイメージへのこだわりには、やはり、固定的な性別役割意識の再生産につながりはしないだろうかという危惧をいだいてしまう。

 


だから、性に基づく差別や抑圧を可能なかぎり解消しながら、しかも、子どもたちにとって、またパートナーや自分たちにとって、風通しのいい父親の生活スタイルというものがいかに可能か、ということが、ぼくにとっての〈男性学〉における「父親論」のテーマということになるだろう。

 


ただ、おさえておきたいのは、男性性の回復を求めるアメリカ合衆国男性学〉においても(父親と息子の関係がより重視される傾向が強いが)、また、性別役割意識を超える方向をめざすぼくのような〈男性学〉においても、育児期における父親(ぼくの主張を正確にいうと〝複数の大人”)と子どもの深いコミュニケーションの必要性という点では、共通しているということは、はっきりしている。

 


感想

 


”3歳までは母の手で"ではなくて、”3歳までは父の手で〟という提案がおもしろいと思いました。

 


これが実現できるような社会が理想だと思います。

 


下記の本を参考にしました 

 


男性学入門』 

 伊藤 公雄

 作品社

 

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