こんにちは。冨樫純です。
独学で、社会学を学んでいます。
そこから、個人的に関心のある話題を取り上げて、紹介したいと思います。
感想も書きたいと思います。
話題 日本も「敗者復活」がしづらい社会か
竹内洋(「日本のメリトクラシー」東京大学出版会)によれば、ターナーの移動分類が、移動規範―その社会で望ましいとされる移動パターン―に注目した分類であるのに対して、J・ローゼンバウムはアメリカにおける「事実としての移動」―移動実態―を分析したといいます。
そして、ローゼンバウムは「トーナメント移動」の存在を指摘したとされます。
すなわち、アメリカの事実としての移動は、すべての人に機会が開放された競争移動でもなければ、エリートを早期に選抜する庇護移動でもなく、この両者を折衷したものとして捉えられます。
たとえば、アメリカの高校におけるトラック移動です。
アメリカの場合、高校は総合制高校で、日本のように高校自体が進学校・非進学校・職業校(専門高校)に分かれているのではなく、一つの高校のなかに進学コース、就職コースが分かれています。
こうした進路コースを「トラック」―陸上競技のトラックと同じ意味です―と呼びます。
ここでは、建前上、生徒は自分の進路志望に合わせてトラックを選択できるという意味で、競争移動の「規範」が存在します。
しかし、移動の事実をみると、進級にともなうトラック移動においては、大学進学トラックから非進学トラックへの下降移動はみられても、逆に非進学トラックから進学トラックへの上昇移動はみられないのです。
実際、ある学年で悪い成績をとると下のトラックに移動しますが、よい成績をとったからといって上のトラックへ進むことはできないからです。
つまり、移動は下方には開かれているが、上方には開かれていないので、庇護移動の「事実」が部分的に存在するというわけです。
こうした移動は、トーナメント移動と呼ばれ、ある段階で「負けて」しまうと次の競争には進めず、ある段階で「勝った」者だけが次の選抜に進める移動です。
しかし、ある段階で「勝った」場合でも次の段階で「負ける」と競争は終わってしまいます。
日本でおなじみの甲子園の高校野球がこれです。
したがって、最終的な勝者 = エリートを段階的に選抜するのがトーナメント移動です。
トーナメント移動の利点は、庇護移動と競争移動を折衷する点にあります。
初期の勝者も次の競争を続けなければならず、その後の保証はないので、競争移動のように常に競争への動機づけが加熱されます。
さらに初期の選抜の敗者にとって取り消しがたい結果をもたらし、より優れた者から次の選抜がなされるので、庇護移動のように、効率的な人材選抜がなされるのです。
つまり、トーナメント移動は競争移動と庇護移動を折衷することで、動機づけと効率のジレンマを解決しているのです。
感想
アメリカは、日本と違い、すべての人に機会が開放された競争社会だというイメージが強かったですけど、そうでもないようです。
下記の本を参考にしました
『ライフイベントの社会学』
片瀬 一男著