とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

トーナメントはスポーツだけのものではない

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的に関心のある話題を取り上げて、紹介したいと思います。

 


感想も書きたいと思います。

 


話題 日本におけるトーナメント移動

 


トーナメント移動とは、ある段階で「負けてしまうと次の競争には進めず、ある段階で「勝った」者だけが次の選抜に進める移動です。

 


竹内(前掲書)によれば、日本の教育選抜=学校における進路の振りわけも、職業選抜= 就職先の決定も基本的にトーナメント移動の構造をもっているといいます。

 


いわゆる進学校に入った方が一流大学に入りやすいし、一流大学を卒業した方が一流企業に入りやすいからです。

 


ここでは、高校進学→大学進学→就職という一連の社会移動の局面を通じて、トーナメント移動による競争が行われているのです。

 


ただし、竹内は、日本のトーナメント移動には、アメリカとの違いが存在するといいます。

 


一つは、トラッキングが外部化されていることで、アメリカのように進路のトラックが高校の内部にあるのではなく、それぞれの高校の間の格差として存在します。

 


だから、実質的に中学3年次の成績にもとづく進路指導でトラックが確定するのです。

 


この点で、アメリカよりも早い時期に教育選抜が行われる「庇護移動型トーナメント」だというわけです。

 


二つめは、日本社会は「御破算型移動」すなわち敗者復活の可能性がある社会だということです。

 


とくに、トラッキングが高校間格差として外部化されているために、学校間の進学競争が激化するので、2番手の高校は1番手の高校を追い越すよう生徒の進学指導に力を入れます。

 


その結果、2番手の高校に入ったからといって、大学進学機会が失われるのではなく、そこでよい成績をあげると1番手の高校と同じレベルの大学に進学するという敗者復活の可能性が開かれているのです。

 


また、近年の入試改革推薦入試・AO入試の導入は敗者復活の可能性を増大させたのです。

 


たとえば職業科から大学に資格推薦で入るなど。

 


他方、企業に目を向けると、日本型経営の特色として、終身雇用制、年功序列制、企業別労働組合があります。

 


しかし、これがあてはまるのは大企業の男性社員、基幹労働者のみです。

 


中小企業労働者は、そもそも労働組合が組織されていないことが多く、倒産・リストラで転職が多いですし、女性労働者の場合、結婚・出産退職が少なくないうえに、子育て後はパートタイムという不安定就労になる場合も少なくありません。

 


さらに、企業構造と日本型経営のジレンマがあり、企業は上に行くほどポストの少ないピラミッド型の組織構造をもっているので、新卒労働者を一括採用して終身雇用・年功制を維持することは構造的に不可能です。

 


これに対する対応策としては、まず組織に人員を合わせる方法があります。

 


これは、年功が進むにつれ人員を組織外へ放出するものですが、終身雇用制と矛盾します。

 


他方、人員に組織を合わせる、すなわち下位の人員を受け入れるように上位のポストを増やすという方法もあります。

 


この方法は、企業の成長期には可能ですが、減量経営を強いられている時期には困難を来たすので、(何らかの調整メカニズムが必要となります。

 


そこで、今田ら(今田幸子・平田周一「ホワイトカラーの昇進構造」日本労働研究機構)は、日本特有の3つのキャリア・モデルの組み合わせに注目します。

 


まずは一律年功モデルで、勤続年数に応じて昇進させていくキャリア・モデルです。

 


次がトーナメント競争モデルで、ある時点で選抜された者のみが次の選抜に進むキャリア・モデルです。

 


トーナメント移動の利点は、先にも述べたように庇護移動と競争移動を折衷した点はありました。

 


したがって、競争移動のように、常に競争への動機づけが加熱されると同時に、庇護移動のように、効率的な人材選抜がなされるのでした。

 


最後は、昇進スピード競争モデルで、昇進時期に差異は生じますが、すべての者が昇進するキャリア・モデルです。

 


これは、一律年功モデルとトーナメント競争モデルを折衷した昇進構造で、昇進時期に格差が生じる点で一律年功モデルと異なりますが、最終的には全員が昇進する点でトーナメント型とも異なるものです。

 


感想

 


日本は「敗者復活」があり得る社会なのかもしれないと思いました。

 


下記の本を参考にしました

 


『ライフイベントの社会学

   片瀬 一男著

 世界思想社