とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

学校階層の影響力

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的に関心のある話題を取り上げて、紹介したいと思います。

 


感想も書きたいと思います。

 


話題 

 


学校階層と職業階層は関係あるのか

 

 

 

学校階層と職業階層の関連を説明する理論があります。

 


それは、ネオ・マルクス主義の立場に立つS・ボウルズとH・ギンタスの対応理論(『アメリカ資本主義と学校教育」岩波書店)です。

 


この理論によると、まず職業階層のなかには、仕事の自己裁量の範囲が大きく、自律性の高い上層ホワイトカラー的職業(専門・管理職)と、自律性が低く、規則や上司の指示に従って作業を行うブルーカラー的職業があります。

 


他方、学校の初期段階、とくに中学・高校では規則への服従が要求されます。

 


服装や立居振舞に関する細かな校則が生徒手帳を埋め、風紀委員会が目を光らせています。

 


これに対して、一般に進学校や伝統校ほど、校則が緩やかで、「自主・自律」が校是となって、校門の前の石碑などに刻まれています。

 


そうでない高校はけっこう校則が厳しい。

 


さらに、進学校の生徒の多くが入学する大学では自律性が要求されます。

 


高校までと違って、大学では授業も自分で選び、

卒論のテーマも自分で決めることが求められます。

 


したがって、企業は自律性が要求され、社会的地位も高い上層ホワイトカラー的職業は高等教育を受けた者、それも進学校・伝統校から大学に進学した者から採用するのに対して、規則に対する従順さを要求され、社会的地位の低いブルーカラー的職業は、中等教育の卒業者から採用する―こうして学校教育の階層(進学校か否か)と職業階層・階層構造は対応しているというわけです。

 


企業の採用担当者がいう「地頭」とは、こうした自律性のことだったのです。だから「一番になったことのあるやつは、自己管理能力がある」という人事担当者の本音も出てくるのです。

 


こうなると学校と企業社会全体の陰謀か! という疑いも出てきます。

 


ボウルズとギンタスは、こういいます。

 


異なったレベルの教育制度は、職業構造のなかで異なったレベルの労働者を送り込むが、それに対応して教育制度も、ヒエラルキー的分業におけるレベルと比較できるような内部的組織に収斂する傾向をもつ。

 


(中略)…企業のヒエラルキーで最下位のレベルでは、規則にしたがうということが強調され、中位のレベルでは、信頼性と、直接的に、絶えず監督されなくても働くことのできる能力が重要視される。

 


他方、もっと上位のレベルでは、企業の規範を内面化するということが強調される。

 


教育でも同じように、下位のレベル(中学、高校)では、生徒の活動をきびしく制限し、方向づける傾向をもつ。

 


教育体系のなかで少し上の師範カレッジやコミュニティ・カレッジになると、もっと学生の独立を認めるようになり、全体的な監督が少なくなる。

 


もっと上位のレベルには、4年制のエリート・カレッジがあって、生産のヒエラルキーのもっと上位のレベルと調和するような社会的関係が強調される。

 


(中略)…同じ学校のなかですら、異なった進路をもつ人々の間の社会的関係は、異なった行動規範に同調するものとなっている。したがって、ハイスクールでは、就職や一般的な進路を選ぶと、規則遵守とこまかい監督が強調されるが、大学進学を選ぶときには、もっと開放的な雰囲気をもち、規則の内面化ということに重点が置かれる傾向をもつ。

 


S・ボウルズ & H・ギンタス「アメリカ資本主義と学校教育I」岩波書店、234―235ページ。

 


しかも、このような教育の違いは、学校教育だけでなく、家庭教育においてもみられると、ボウルズらはいいます。

 


ここで彼らが依拠しているのは、アメリカの社会学者M・L・コーンらによる家族における社会化価値に関する実証研究 (M. L. Kohn, Class and Conformity: A Study in Values. Dorsey Press)です。

 


コーンらは、親は自分の仕事で重視される価値を子どもの養育(社会化)の方針に持ち込むといいます。

 


中流階級の親の場合、仕事で自律性の発揮が求められる―ただし、ボウルズらによれば、これは自律性というより、規範を内面化して他者に命じられるまでもなく自発的に働く能力だといいますので、自分の子どもにも自律的な判断や物事への好奇心などを求める。

 


これに対して、労働者階級の親は自分の仕事で期待される規則や管理への服従・同調を自分の子どもに教え込もうとする、というのです。

 


つまり、学校だけでなく家族の階級的地位もまた、子どもの人格特性や価値観に影響しているのです。

 


こうして、階級的地位の高い子どもほど、上位の学校に進学するので、その性格はさらに学校によって強化され、親と同じ職業的地位に適合的なものとなる。

 


これが家庭教育や学校教育を通じた階級構造の再

生産といわれるプロセスです。ボウルズらは、こうした家族・学校と階級構造の対応関係が歴史的にどのように成立してきたかを十分洞察していなかったために、アメリカのリベラルな教育改革が挫折したといいます。

 


実際、不平等が再生産されるメカニズムが形成された歴史的経緯を知らなければ、アメリカに限らず、どこの国の教育改革も小手先ものか、人気とりの選挙対策に終わる運命にあるのです。

 


感想

 


学校階層と職業階層は関係性が強いと改めて感じました。

 


また、名門校出身であるというだけで、優遇されやすいのもわかる気がします。

 


下記の本を参考にしました

 


『ライフイベントの社会学

   片瀬 一男著

 世界思想社