とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

「資格」は役立たない?

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的に関心のある話題を取り上げて、紹介したいと思います。

 


感想も書きたいと思います。

 


話題   

 


日本における「資格」は役立たない?

 


河野員博によれば、資格は教育資格としての学歴・学位、の職業資格―これには法律にもとづく国家資格(医師、弁護士など)、官公庁の認可にもとづく公的資格、民間団体が授与する民間資格(漢字検定など)があります、3職能資格(特定の企業内のみで通用する身分称号)に分類されます。

 


このうち、教育資格と職業資格の重視のされ方によって、資格社会は4つに分類されるといいます。

 


まず教育資格・職業資格とも重視されるのがアメリカ型、教育資格より職業資格が重視されるのがヨーロッパ型、逆に職業資格より教育資格が重視されるのが日本型資格社会、最後にどちらの資格も重視されないのが世襲制またはコネ社会というわけです。

 


実際、日本の大学進学率はアメリカより低く、ヨーロッパ諸国より高くなっているものの、成人学生も含めた大学院の充実度は、欧米諸国に劣っています。

 


しかも、教育資格でも学歴より学校歴―どの大学のどの学部に行ったのか――が重視されます。

 


そして、職業資格はこれらの国に比べて未整備であるために、教育資格は職業資格を補完することになります。

 


具体的には、企業は採用にあたって教育資格による「グレード設定」(高卒以上とか大卒以上など)をします。

 


こうして教育資格は社会的閉鎖機能特定の人を選抜し、ほかの人を排除する機能をもつのです。

 


実際、これまで地位達成研究においては、志望職業への入職を可能にする条件がいくつか研究されてきましたが、そのなかに資格の効果に関する分析があります。

 


すなわち、日本の資格の効果に関しては、阿形健司(「資格社会の可能性」近藤博之編「日本の階層システム3 戦後日本の教育社会」東京大学出版会)が、日本には実際には使われず「死蔵率」の高い「象徴的な」資格が多く、所得には貢献しないことを明らかにしています。

 


それによると、たとえば、保育士免許や教員免許のように、女性の免許保有者が多い「女性専門職型」資格や、技能士など「男性工業型」資格の一部は、死蔵率が高いといいます。

 


このうち前者は学歴と結びついていますが、後者は学歴との結びつきは弱いとされます。

 


これに対して、学歴と結びつくとともに死蔵率が少ないのは医師など「専門職」資格、また学歴を要しないが機能的な(つまりよく使われる)資格としては、調理師など「伝統型」資格があるといいます。

 


そこで、これらの資格が中学時代の希望職業への入職に役立つか調べた結果(片瀬一男「職業アスピレーションの実現における教育と資格」近藤博之編『ライフヒストリーの計量社会学的研究」平成14~16年度科学研究費補助金 研究成果報告書)、まず第1に、男女とも、39歳以下の若年層では、希望職業と初職(学校卒業後、最初についた職業)に関連がみられませんでしたが、40歳以上の中高年層では、両者に有意な関連がみられました。

 


このことから、中高年層ほど、希望職業を初職で実現しているとみることができます。

 


第2に、高等教育の効果についてみれば、男性の場合も女性の場合も、年長の世代においてのみ、高等教育は、希望職業の実現とりわけ上層ホワイトカラー(専門職や管理職)への入職に効果をもつことがわかりました。

 


このことは、戦後の高学歴化の進行すなわち「大衆教育社会」(刈谷剛彦「大衆教育社会のゆくえ」中公新書)の成立にともない、いわゆる「学歴インフレ」が生じて、高等教育の稀少価値が低減したことを意味していると考えられます。

 


第3に、資格数についてみると、男性の中高年世代においてのみ、初職における希望職業の実現に寄与していました。

 


これに対して、若年男性および女性においては、資格数が希望職業の実現には関係していませんでした。

 


また、資格種別に関しては、男性においてのみ、専門職型資格をもつことが、上層ホワイトカラーへの入職に有利に働いていました。

 


しかし、ほかの資格(工業型資格と伝統型資格)は、男性の場合も初職における希望の実現に関連していませんでした。

 


また、女性の場合、どの資格の効果もみられませんでした。

 


したがって、資格数からみても、資格種別からみても、「資格社会」が成立しているのは、一部の男性における地位の達成、すなわち専門職型資格をもった者の専門職や管理職への入職においてのみでした。

 


感想

 


日本において、資格は、役に立たない訳ではないけど、限定的であることを学びました。

 


下記の本を参考にしました

 


『ライフイベントの社会学

   片瀬 一男著

 世界思想社