こんにちは。冨樫純です。
「将来の予測」についてのコラムを紹介します。
おもしろい実験結果だと思いました。
近い将来の方が、悲観視する傾向があるというのはそうかも知れないと思いました。
自分がこの先どうなるかという予測、すなわち将来の自分についての予測はどのようになされるのだろうか。
このレポートはいつまでに仕上げられるか、この手編みのマフラーはいつまでに編み上げられるかなど、ある作業をいつまでに終えることができるかという見通しを立てることはよくある。
しかし、これらの予測はかなり不正確であり、一般的には楽観的になりがちである。
ビューラーらは、心理学科の学生に卒論がいつ完成するかを予測させた。
できるだけ正確な予測に加えて、楽観的(すべてがうまくいった場合)、悲観的(すべてが悪くいった場合)予測も尋ねた。
実際に要した日数と比べると、それらのいずれよりも実際に要する時間は長かった(Buehler et al., 1994)。
このように作業の終了時を実際よりも早く予測してしまう傾向を計画錯誤 (plan-ning fallacy)とよぶ。
自分の予測よりも終了(または完成)が遅れることを繰り返し経験してもこの錯誤はなかなか修正されない。
なぜなら、作業の終了時を推測するときは、私たちはこれから起こる将来のことのみに焦点をあててしまい、過去の類似の経験について考えることが少ないからである。
作業の終了時がいつになるか考えているときの思考を調べてみると、ほとんどがこれから先のことについてであり、過去に同様の作業をしたときのことを想起している場合は非常に少なかった(Buehler et al., 1994)。
また、クリスマスの準備のための買い物を題材にした実験では、数分間どのようにクリスマスの買い物を進めるつもりか、いつ、どこで、どんなものを買うつもりでいるのか、具体的な計画を考えて回答するよう指示し、これから先のことに思考を焦点化させた場合のほうが、そのような指示がない場合に比べて計画錯誤が強くなった
(Buehler & Griffin, 2003)。
将来の計画を立てるためにそのことに集中して考
えると、過去の類似した経験を想起して参考にすることが難しくなり、余計に錯誤が大きくなるという皮肉な現象である。
しかし、将来に関する予測がいつも同じように楽観的なわけではない。
楽観視の程度は将来までの時間的距離によって異なってくる。
遠い将来に対する予測は楽観的だが、近い将来に関する予測は楽観性が弱まったり、悲観的になっ
たりする。
シェパードらは大学生を対象に調査をして卒業直後の給料はどのくらいになると思うかを尋ねた(Shepperd et al, 1996)。
すると、学年が進むにつれ(現実が近づくにつれ)予測の楽観性は低減した。
さらに、4年生の卒業直前時においては、予測と実際の初任給の平均との差は(統計的に有意では)なくなっていた。
このような現象がなぜ生じるかはまだ明らかになっていないが、現実が目の前に迫ってくると、ものごとの否定的側面にも目を向けなければ、その状況をうまく乗り越えることはできないので、現実に備えるために楽観性が低下するのではないかと説明されている。
下記の本を参考にしました
『社会心理学』
池田 謙一 他2名