とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

婚約解消とは

こんにちは。冨樫純です。


ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。

 

法律的なものです。


質問の内容は、主に女性目線からものです。


質問


お見合いをしたのですが、デートやプレゼント攻勢など強引な彼のリードで、迷っているうちに結納、結婚式の日取り、新婚旅行の場所の決定と、猛スピードで結婚に向かって準備が進んでしまいました。


しかし、彼の強引さに結婚生活をしていく自信がなくなってきました。


今から、引き返すことは無理でしょうか。


解答


婚約をした当事者は、フィアンセとして誠実に結婚をする法的義務を負うことになりますが、約束を破ったからといって結婚自体を強制することはできません。


結婚をする意思を喪失してしまった者に結婚を強いても、幸せな生活は期待結婚の約束をできないからです。


しかし、結婚の約束を正当な理由もなく破棄した人は、破談のために相手方が受けた精神的、財産的損害を賠償しなければなりません。


法的には、結婚しようという約束を破った契約違反(民法415条)または婚約者としての地位の侵害を理由とする不法行為責任が追及されます(同 709条)。


婚約を破棄できる正当な理由とは、将来の結婚生活の維持継統を期待しえないようなもっともな理由という意味です。


たとえば、社会常識に反するひどい言動、暴力、虐待、侮辱などが入ると思われますが、相性や身体の線が細いなどの理由だけでは、正当な理由になりません。


もちろん、占いで凶とでたとか、親の反対などの理由で一方的に解消を求めることもできません。


あなたの場合、彼の押しの一手に押し切られた形で、はっきりした結婚の意思を形成できないまま婚約、結納、式場の予約と事態が進んでしまったようです。

 

結婚の約束をきちんとしていないと主張できないわけではありませんが、それよりも、正直に、将来の結婚生活を継続できる自信がないことを相手方に伝えて、婚約を解消すべきでしょう。


婚約解消の正当な理由は、すでに述べたように、裁判上の離婚が認められる理由よりも広いと考えてよいのですが、あなたの場合も、性格の不一致や結婚意思の不確定さを理由に、今からでも勇気をもって解消の話合いをすべきではありませんか。


問題となるのは結婚のために買った洋服ダンス、電気製品など、俗にいう嫁入り道具でしょう。


嫁入り道具は返品しない限り損害とはみないという立場(高松高裁1955·3·31 判決)、一律に7割を市場価値の下落分とみる立場(徳島地裁1982· 6·21 判決)、購入価格と処分価格との差額を損害とみる立場(大阪地裁1983·3.8判決)があり、差額を損害とみる立場が強くなっています。


このほかの損害としては、仲人さんへの謝礼、新婚旅行や式場のキャンセル代、結婚により職場を退職したことによる逸失利益なども入ります。


しかし、最近では、結婚による退職は当然のはなしではなくなってきているために、相手方から頼まれて、退職した場合でなければ、その減収分を損害として請求できないという考え方が強くなっています(東京地裁 2003· 7·17判決)。


精神的損害としての慰謝料は、50万~500万円くらいですが、具体的事情により増減することになります。


2010年の全国の家庭裁判所での婚姻外男女関係調停事件は507件で、最近は婚約にかかわる調停事件は減少気味です (『司法統計年報3 家事編平成22版』)。


なお、1975年の婚姫外男女関係調停事件は2614件)。


結婚前の男女関係のトラブルは、家庭裁判所にさえも持ち出さないという傾向がはっきりとうかがえます。


恋愛中の男女間で、誕生日やクリスマスのプレゼントをあげたりデート代を負担した場合、法律的には贈与としてなされた以上、一方的にこれを取り消して 「返してくれ」ということはできません (民法549条 550条但書)。


贈与というのは、ただで金品をあげる契約ですが、口約束しただけのときは、本気で契約を実現する意思があるかどうか不明なこともあり、契約としての効力は弱いものと考えられています。


金品を渡したり支出したときには、簡単に白紙に戻されては、相手としてもたまったものではありません。


また、あなたが彼と結婚の約束をする仲であったとしても、交際期間中の金品のプレゼントは、情から出るもので、後日返してもらいたいという趣旨の贈り物ではないはずです。


したがって、一般的には「もらいきり、使いきり」のつもりでの贈与であって、返還の合意がない限り、返してもらうことはできません (大阪地裁1968·1·29 半判決)。


日本では、2人の間で結婚の約束がきちんと成立すると、仲人さんをたてて儀式や金品のやりとりをすることがあります。


これを結納と呼びますが、婚約した2人や双方の両観を含めた関係者の間のおつきあいを親密なものとし、結婚への約束を強くするために行われます。


つまり、結納は、婚約が成立し、将来の結婚生活の成功を祈って当事者間で渡される金品のことをいいます。


2人の間で婚約が解消され結婚までいかなかったときに、結納を受け取ったほうは、返還しなければならないのでしょうか。


結局、結納を返すかどうかは、当事者間の合意または地方の慣習によって決まるといえますが、一般に結納は、結婚の成立を目的とする一種の贈与と理解されています。


したがって、事実上または法律上の結婚が成立した場合には、結納はその目的を達成したので返還を求めることはできませんが、結婚までに至らなかった場合には、返還しなければなりません。


しかし、結納を贈った側に婚約解消の責任がある場合には、原因をつくった者からの結納の返還請求は、権利濫用 (民法1条3項) や信義にもとる(同1条2項) ため許されないでしょう。


下記の本を参考にしました


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ