こんにちは。冨樫純です。
「ことばのない環境で育つ」についてのコラムを紹介します。
悲惨としかいいようのない事件だと思いました。
社会的に隔離され、ほとんどことばに接することなしに放置されてきた子どもたちの記録が、いままでにいくつかある。
1799年フランス、アヴェロンの森で見出されたアヴェロンの野生児、1920年インド・ミドナプールで狼に育てられたとされる2人の少女などがその例である。
これらの子どもたちは、十分な言語発達が見られなかったという。
前者についての医師イタール (Itard,1801,1807)による記録は、当時のフランス政府に対する報告書を含み、信頼するにたる資料である。
こうした痛ましい事例は、 20世紀になってもときおり報告され、言語発達に関心のある言語学者、心理学者、神経科学者たちの注目を集め、言語獲得のための働きかけがなされている。
その1つは、1970年アメリカで、13歳半ほどで保護されたジーニーという少女である(Curtis、1977)。
ジーニーは、小さな薄暗い部屋に押し込められ、幼児用椅子にくくりつけられて放置されたままで過ごしていたという。
ジーニーは父親の怒鳴り声以外はことばを聞くことがほとんどなく、彼女が受ける聴覚刺激は、時たま耳に入るいくつかの雑音だけだった。
救出時には、発達の遅れが著しく、固形食物を噛んだり飲み込んだりできず、まっすぐ立っこともできかった。
ことばは2、3語の理解は可能であったが、声を出すことはできなかった。
出後5年間で、行動の面でもことばの理解の面でも急速に発達を遂げたが、言語発達の仕方はアンパランスで、語量の理解に比べて自発的な発話が乏しく、とくに時制や能動·受動の区別などについての文法的な能力が劣っていたという。
下記の本を参考にしました
『心理学』第5版補訂版
鹿取 廣人 他2名