こんにちは。冨樫純です。
「親子関係と友達関係はどちらが重要か」についてのコラムを紹介します。
親子関係がそれほど重要でないかもしれないと思いました。
ハリス(Harris, 1995)は、親子関係中心主義に対して、集団社会化論(group socialization theory)の立場から鋭い批判を加え、従来、親子関係の影響とされてきたものは、遺伝の影響と、地域や友達の影響が混在していて、それらを別にすると、きわめて弱い働きしかしていないと批判した。
その後、親子関係を重視する代表的な研究者からの実証研究を整理した反論がなされている
(Collins et al, 2000)。
また、ヴァン デル(Vandell, 2000)では親子関係や友達関係やその他多様な要因が関係するという研究の整理も行われた。
ハリスの理論は次の3つに整理できる。
① 親の養育行動は、子どもが大人になってもつ心理的特徴には何も影響がない。
②仲間集団、とくに、児童期・青年期の時期のものが心理的機能に影響する主たる環境要因である。
③1対1の関係(親、きょうだい、友人、教師などとの)はその状況に固有なものとなる。
強力な情動を引き起こすが、行動に関してはその関係内での変化しか引き起こさない。
以下、ヴァンデルの整理と反論に基づきつつ、この議論を吟味する。
①について、これまでの発達研究は、親の養育だけがもっぱら環境要因として決定的だと主張してなどいない。
親の影響は子どもの特徴や家庭の状況などで変化し(たとえば、子どもの性格や出生順位など)、ある種の子どもにある仕方で影響し、別な子どもには別な仕方で影響するといったことが多い。
さらに、家庭で得たものが学校などの友達関係に影響していくといった研究結果も見られる。
②について、仲間集団が子どもの発達に影響することは、多くの研究から示されている。
しかし、その影響が大人になってからの人格や適応に対してもっぱら唯一の要因だとか、主たる要因だといったことを明瞭に示している研究は
ない。
③について、仲間集団だけでなく、1対1の友情関係やきょうだい関係、教師と子どもの関係もまた心理的幸福感や動機づけ、有能さの発達に影響を与える要因となる。
そもそも,異なった社会的関係での各々の役割は、独自の影響力をもつ。
親は、愛情、安心感、保護、助言、限界設定にとって重要だろう。
きょうだいは、相手の気持ちの理解、対人葛藤の調整、上下関係の地位が異なることに関連した行動の学習の機会となる。
友情は、相互へのちぎり、支持信頼のもととなりうる。
幼児の教師・保育者は親に似た役割を果たすだろうし、年長の子どもの教師は熟達やさらなる機会を提供することができる。
それらが直接に影響することもあるし、他の影響に対して、補償的あるいは保護的な役割を果たすこともある。
たしかに、親子関係、とくに、人生の初期のそれが発達で飛び抜けて重要だという説は疑わしい。
発達という現象は、きわめて複雑で、多数の要因が関与している。
人生の後になればなるほど、その時期に近い要因が重要になることは当然であろう。
下記の本を参考にしました
『心理学』新版
無藤 隆 他2名