こんにちは。冨樫純です。
「ベムの予知実験」についてのコラムを紹介します。
やはり、超能力に挑んだ学者がいたようです。
透視や千里眼、念力や念写、未来予知など人間の超能力(psi)と呼ばれる能力には、古くから多くの心理学者が興味をもち、研究してきました。
日本最初の臨床心理学者であった福来友吉(1869-1952)も千里眼や念写を研究テーマにした心理学者のひとりです。
しかしこれまでのところ、そうした超能力を証明するきちんとした研究成果は得られていません。
社会心理学やパーソナリティ心理学の分野でたくさんの業績を挙げてきたダリルベム(D. Bem; 1938- )は、2011年に世界で最も権威のある心理学誌のひとつである Journal of Personality andSocialPsychology(JPSP)に人間の予知能力の存在を確認したという論文を発表します(Bem, 2011)。
この論文でベムは、コンピュータ画面に現れる画像や文字のうちどれかを選択する、という心理学でとてもよく使われる実験手法を用いて、ランダムに提示される画像や文字の中に不快な內容や性的な內容が含まれている時に、人はそれを予期して回避することができることを示しました。
ベムの研究は洗練された手法で実施されており、統計的にも有意な結果を示しているために、JPSP はそれを採択して掲載しました。
当然のことながら、この論文は大きな議論を巻き起こします。
そして、 何人もの心理学者がベムの実験を追試して、本当にそういう結果が出るのかを確かめましたが、ベムが示した結果を再現することはできませんでした。
たとえば、イギリスのリチーら (Ritchie et al., 2012) はベムの実験の一部をベムと同じ材料、同じ実験プログラムを用いて追試しましたが、 結果は否定的なものでした。
こうした追試研究はJPSP をはじめ権威ある学術誌に投稿されましたが、学術誌側が「追試論文は独自性がないので掲載しない」 という思度を示したことも大きな問題になりました。
また、ベムの論文のデータや分析に疑わしい研究実践(QRPS) が含まれているという指摘もあります
(Wagenmakers et al., 2011)。
ベムの論文をめぐる一連の経緯は、研究の再現性や疑わしい研究実踐に対する心理学の対応に大きな影響を与えたという点で、歴史に殘るものといえます。
下記の本を参考にしました