こんにちは。冨樫純です。
「顔面視覚と内観」についてのコラムを紹介します。
障害者はその障害をカバーするために、他の感覚が発達するといわれますが、その一種だと思いました。
顔面に未知の光覚受容器があるという説には、特に驚きました。
一般に視覚障害者の場合、前方にある壁のような大きな障害物の存在にかなり遠方から気づくことが知られている。
視覚障害者のこうした障害物知覚については、かつてはいろいろな仮説が提出されていた。
視覚障害のため視·聴·唄 味などのいわゆる五官以外の第六官(感)が働く、というのもその1つである。
その中で、反響音説(自分の足音などの周囲からの反響音を手がかりとしているとする説)と並ぶ有力な仮説は、顔面に未知の光覚受容器があって、それによって障害物の知覚が行なわれるという説であった。
これは、「大きな障害物に接近すると、額のあたりに圧迫感と暗い陰が迫ってくるような感じがする」という視覚障害者の内観に基づいており、顔面視覚と呼ばれていた。
心理学者のダーレンバッハらは、一連の実験的分析を行ない。この障害物知覚が顔面視覚ではなしに、高周波の反響音による聴覚の働きによることを明らかにした。
その実験ではまず晴眼者 (視覚の健常な人)、視覚障害者の両方を被験者として、彼らを未知の部屋に連れてくる (晴眼者は目隠しをして)。
実験者は被験者の体を回して方向感覚の手がかりをなくしてから、試行ごとに距離をランダムに変化させた衝立に向かって歩かせる。
そして、まず衝立の存在に気がついたとき手を挙げ、次いで、できるだけ衝立に接近して止まるように指示した。
目隠しした晴眼者も衝立にぶつかる前に障害物の存在に気づく。 ただし晴眼者は視覚障害者に比べてかなり衝立に接近してしまう。
また、できるだけ接近して止まるようにと指示すると、ときには衝突してしまう。
視覚障害者はぶつからずに、わずか数10cm から数cmのところで止まることができたという。
こうした障害物知覚を規定する要因を明らかにするため、①額を覆うカバーをかぶる、②靴底を柔らかいものにする③床にカーベットを敷く④耳に栓をするなどの条件変化をもうけて検討を行なった結果、①では障害物知覚になんの影響もない。
また②、③の条件では障害物知覚の成績は、低下はするもののなんとか可能である。一方④の条件ではまったく不可能になる。
さらに反響音の効果を確かめるため、別人にマイクをもたせて障害物に向かって歩かせ、視覚障害者には、隣室でその際のマイクを通した音をレシーパーから聞いてもらった。
この場合も、正確に判断を行なうことができた、ダーレンバッハらは、こうした種々の分析を通して、障害物知覚が、実は高周波の反響音を手がかりにしていることを示した。
その後の研究によると、晴眼者でも訓練すれば、かなりの程度までこうした障害物知覚が可能になり、障害物の材質や大きさの判断もできるようになるという。
下記の本を参考にしました
『心理学』第5版補訂版
鹿取 廣人 他2名