こんにちは。冨樫純です。
「平等主義、優先主義、十分主義」についてのコラムを紹介します。
個人的には、より不遇な人々の絶対的な水準を改善する優先主義が一番望ましいと思いました。
不平等是正や経済的再分配の要請は、実は複数の異なった理論的観点に立脚している可能性がある。
第1に、人々の相対的格差を縮めることそれ自体に
関心をもつ平等主義がある。
第2に、より不遇な人々の絶対的な水準を改善することに関心をもつ優先主義がある。
第3に、すべての人々が一定の値以上の水準にあることに関心をもつ十分主義がある。
これらの立場は、結果的には同じく経済的弱者への再分配を求めることが多いため、これまではっきりと区別されてこなかったが、いくつかの場合では相反する結論を導く可能性があるため、概念的に区別することが有益である。
平等主義と優先主義と十分主義は、人々の相対的格差を問題視するか、もしくは一部の人々の絶対的水準を問題視するかによって区別される。
とりわけ前者に対しては、「水準低下」 と呼ばれる事態の是非が問われてきた。
不遇な人々の境遇を改善しないまま、恵まれた人々の境遇だけを悪化させれば、 結果的に社会内の相対的格差は(下向きに)縮小するだろう。
しかし、こうした「出る杭を打つ」ような方策がはたして望ましいといえるだろうか。
また、一部の人々の絶対的水準を問題視するにもかかわらず、優先主義と十分主義は次の事例において意見を異にする。
一定の値をはるかに下回る個人aと、わずかに下回る個人bがいるとしよう。
残念ながら、私たちの元には個人aを値以上の水準に押し上げるだけの資源はない。
一方で優生主義の考えでは、それでもより不遇な境遇にある個人aに資源を振り分けるのが正しいということになるが、他方で十分主義の考えでは、一定の値を、上回る可能性の高い個人bに資源を振り分けるのが正しいということになる。
これらの理論的観点のうち、とどれが最も説得的に思われるだろうか。
下記の本を参考にしました
『ここから始める政治理論 』
田村 哲樹 他2名
有斐閣ストゥディア