こんにちは。冨樫純です。
「政治理論と政治思想史」についてのコラムを紹介します。
ぼくのイメージでは、政治思想史とは違っていたので、それほどの驚きはありませんでした。
ても、掘り下げて考えたことはなかったので、面白く読めました。
「専門分野は政治理論です」というと、「ああ、政治思想史ですね」 といわれるときがある。
こういうとき、このコラムを書いている筆者自身は、「いえ、違うんです」と答える。
でも、何が違うのだろうか。
問題は、「歴史」 と、「思想」 ないし 「理論」 との関係である。
政治思想史における歴史と思想 (ないし理論)との関係をどのように理解するか次第で、政治理論と政治思想史との距離は、近くも遠くもなりうる。
しかし、たとえ 「近く」なったとしても、両者の間にはなおも違いがある。
政治思想史が政治理論と最も遠くなるのは、政治思想史研究が歴史研究として認識される場合である。
この場合、政治思想史研究が行うことは、過去の思想家やその著作を、その人物が実際に活躍し、その著作が書かれた当時の歴史的な状況(コンテクスト)の中に適切に位置づけることである。
未公刊の草稿や手紙なども、歴史的な 「史料」 として使用される。
つまり、政治思想史とは、政治に関する思想家やその著作について歴史学として研究することである。
この場合、政治理論研究との違いば大きくなる。
これに対して、政治思想史研究が、理論的、哲学的研究として認識される場合には、政治理論との距離は近くなる。
この場合、政治思想史研究は、過去のある思想家の著作を、理論的、哲学的に再解釈する。
その作業は、現代的な関心に基づいて行われることもある。
たとえば、 「自由」 についての理論的、哲学的な思想史研究は、今日においてどのような自由が望ましいかという問題関心に基づいて行われるかもしれない。
現在の政治思想史研究の主流は、歴史研究としての思想史研究だといわれる。
理論的、哲学的研究として思想史研究を理解した場合には、 政治思想史と政治理論とを同じもの
とみなすべきだろうか。
これは論争的な問題であるが、ここでは、両者を区別すべきとする場合の理由を3つ挙げておこう。
第1に、政治理論は、その論証において 過去の思
想家の著作や過去の歴史的事実だけでなく、あるいは場合によってはそれ以上に、現在についての経験的分析も参照する。
この場合、政治理論研究は、歴史研究よりも経験的な政治学と接点をもつ。
第2に、政治理論にはそれ独自の分析方法があると考えられる。それは、主に論証の方法にかかわっている(井上 2014:河野2014: 松元 2015)。
第3に、政治理論研究は、著作の解釈にとどまらず、新たな理論や概念の創造にも従事する(岡崎2008)。
このように考えるならば、政治理論は政治思想史とは異なる独自の分野ということになる。
下記の本を参考にしました
『ここから始める政治理論 』
田村 哲樹 他2名
有斐閣ストゥディア