こんにちは。冨樫純です。
「法と道徳」についてのコラムを紹介します。
法と道徳を折衷した形がやはり望ましいと思いました。
法と道徳は、どのような関係にあるのでしょうか。
この問題はしばしば「悪法も法か」 という形で問題とされます。
つまり道徳に反するような法も法といえるのかというのです。
これについて、2つの考え方が対立してきました。
1つは、道徳に反していても法律としてきちんと制定されている以上、法は法だという考え方です。 法実証主義と呼ばれています。
これに対しもう1つは、「自然法」 と呼ぶことができるような高次の道徳に反するような法律は、たとえきちんと制定されていたとしても法とはいえないという考え方です。
自然法論と呼ばれています。
このどちらが適切な考え方なのかは大変難しく、いまも多くの法律家が悩んでいるところです。
第2次世界大戦のおりドイツのナチスは、議会を通して全権を掌握し、ユダヤ人を劣った民族だとして大量に虐殺しました。
そこで戦後は、自然法思想が台頭し、たとえきちんと法律として制定されても道徳に反主るような法律は法とはいえないとする見解が有力になりました。
でもその後、世界が落ち着きを取り戻すと、道徳を理由に法律に抵抗することを認めることが実定法秩序を崩壊させる危険性があるとして、自然法に懐疑的な見解も主張されています。
現在の日本では、憲法が基本的人権を保障し、自然法と呼ばれた道徳の中身を憲法自体が保障していますので、かつてのような悪法が正当に制定されるということはありえません (それらの法律は憲法に反し、正当に制定されたとはいえないでしょう。ナチスの法律も正当に政権をとり正当に制定されたとは思われません)。
でも、それを超えたところで、なお憲法をも超えた自然法を認めるべきかとどうかが争われています。
下記の本を参考にしました。
『はじめての法律学』HとJの物語
松井 茂記 他2名
有斐閣アルマ