とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

平和とは何かを考える

こんにちは。冨樫純です。

 

『「平和」とは何か? 壮大なテーマへの答えとは』についての提案を紹介します。

 

インタビューに基づき、次々と論理的にアイデアが展開されるので、感動しました。

 

①インプット

 

このチームはまず、平和の対義語として、「差別」や「偏見」という言葉に着目しました。

 

そして、留学生など日本に住んでいる外国人にヒアリングをしていきました。

 

彼らは、外国人に「日本人からの偏見や差別に困っていますか?」という質問をしたところ、「はい」と答えた人は1割程度と少数派でした。

 

しかし同時に、日本人に「外国人に対する偏見や差別があると思いますか?」と聞いたところ、半数以上にのぼる人が「はい」と答えました。

 

お互いの回答にギャップがあったことなどから、彼らは日本人の抱えている差別意識が外国人にあまり伝わっていないことに気づきました。

 

さらに、外国人から詳しく話を聞くと、差別や偏見は感じないけれど「親友にはなりづらい」「頼み事ができない雰囲気がある」といった悩みを抱えている人が多くいることがわかってきました。

 

表面上は問題がなさそうであるものの、実は「見えない差別」が存在する状態なのではないかと彼らは考えました。

 

そこで、「日本人特有の見えない差別意識」について調査を始めました。

 

そして、それらは日本人に根付いた匿名で情報を発信する文化や、メディアが作る偏った人種のイメージが大きく起因しているのではないかと仮説を立てました。

 

また同時に、日本人だけではなく世界中の差別意識に共通する問題についても調査をしました。

 

そして差別が起こる原因を、文化的な要素、外見的な要素、言語的な要素の3つの要素に分類し、それぞれ分析を行いました。

 

そして彼らは、日本人は外国人に対し、偏った情報を元にステレオタイプの考えを持っていることが多く、その結果少なからず差別意識が生まれてしまっていることを発見しました。

 

また、日本人の差別の特徴として、匿名での情
報発信を始めとした目立たない行動が多く、その実態はあまり表層化しないということを発見しました。

 

これらの調査から、「他者を理解すること自体をないがしろにしてしまっていること」が、“見えない差別"の根本的な原因であると彼らは結論づけました。

 

②コンセプト

 

「平和とは、誰とでも差別なく接することができる世界」と定義し、それを実現する方法として「まずは知る。そして知り続ける」をコンセプトに掲げました。

 

③アウトプット

 

その結果として生まれたアイデアが「マドトモ」で、小学校の様々な教室の窓に、海外の小学校とテレビ電話で繋がったマドトモ専用の特殊なディスプレイを設置し、お互いにコミュニケーションを取りながら学校生活を送るという内容です。

 

まるで窓の向こうに友達がいる感覚で交流できることから、「マドトモ」と名付けました。

 

彼らは小学校に足を選んで、日本と各国との時差を調べたところ、ほぼ時差のない国がアジアを中心に10ヵ国ほどあり、十分に実現可能なアイデアだったそうです。

 

実際には会っていないのに、常に知っている顔の相手がディスプレイの向こうにいて、「今日も元気?」と手を振ることができる。

 

そんな環境があれば、今までとはまったく違っ
た友達体験ができるのではないか」と、彼らは考えたのです。

 

実際、彼らは小学校に足を運んで現地調査をした
り、教頭先生にインタビューし、「マドトモ」を実際に設置できる可能性についても調べています。

 

そして、「図工室や音楽室は特に設置する価値がありそう」といった話を聞いてきました。

 

そこからヒントを得て、彼らは「音楽の時間にみんなで一緒に合唱しよう」「一緒にお互いの似顔絵を描こう」といったコミュニケーションであれば、言語にあまり頼らずに交流ができるのではないか、ランチタイムにお互いの食文化を通じて交流したら親睦が深まるのではないかと発想を広げていきました。

 

また、学校で人気のある先生を観察し、児童たちを名前で呼んで接していることに気づいたことから、「ディスプレイに近づくと相手の名前が名札のように表示される」という仕組みを考案しました。

 

さらに、「雨降って地固まる」のことわざのとお
り、ケンカをして仲直りすると以前よりも仲よくなるものです。

 

先ほどの教頭先生のインタビューでも、「ケンカはお互いを理解するために必要で、そこから仲直りできるかが重要」という話があり、この話をもとに自然と仲直りを促す仕組み「マドワレ」を追加しました。

 

「マドワレ」は、画面越しにケンカが起こると映像上にヒビが入り、ヒートアップするとやがて通
信ができなくなってしまう機能です。

 

しかし、子どもたちが謝ることでこのヒビは修復され、自然な仲直りを促します。

 

頭が柔軟な小学生の時期にこのような経験をして育つことで、彼らが大人になった10年、20年先の未来を、差別や偏見のない平和な社会にできるのではないか、と考えたのです。

 

下記の本を参考にしました

 

『東大教養学部「考える力」の教室』
 宮澤 正憲著
 SBクリエイティブ