こんにちは。冨樫純です。
哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
名前の影響
2020年のNHKスペシャル「食の起源」で行われた面白い実験を紹介しよう。
その実験には20代から40代の男女30人が集められ、AとBの2つのグループに分けられた。
どちらのグループも同じポタージュスープとペペロンチーノを食べるのだが、それぞれのグループに伝えられる料理名が違っていた。
Aグループには、ポタージュスープが「低脂肪ごぼう健康スープ」という名前で、ペペロンチーノが「パスタ風ズッキーニと大根の炒め物」という名前で提供された。
これに対し、Bグループに伝えられた料理名は「鳴門鯛のダシたっぷりポタージュ」 「モチシャキニ色麺の創作ペペロンチーノ」である。
食べた感想を聞くと、Aグループからは「味が薄い」とか「クスリ的な味がする」といった答えが得られ、食事に満足した人の割合はグループの60パーセントだった。
これに対し、Bグループの感想は「後味が良かった」「優しい味」といったもので、満足した人は87%だった。
この実験を聞いてどう思うだろうか。まず思いつくのは「名前に騙されている」というものだろう。
同じものを食べているのだから同じ味がするはずだし、おいしさも食事から得られる満足感も同じであるはずだ。
しかし、実験参加者は名前に惑わされて評価が歪んでしまったのだ。
こうした考えの背後には、おそらく「味やおいしさは舌だけで評価されるべきだ」という見解がある。
この考えは「純粋主義」と呼ばれるものに相当する。
美学では食よりも絵画や音楽といった芸術であることが明らかなものが主題となるので、純粋主義もたいていはそうした芸術に関して主張される。
それによると、絵を評価する際には色使いや構図など眼を通して知られるものだけを考慮すべきであり、その作品がいつ誰によって作られたのかといった情報は評価に反映させるべきではない。
そうした情報から影響されない「無垢な眼」で見て評価すべきである。これを食に当てはめると、料理は「無垢な舌で味わって評価すべきだということになるだろう。
感想
メニュー名が売り上げに影響することは知られています。
それを実験して確かめているところがおもしろいと思いました。
下記の本を參考にしました
『美味しい』とは何か
食からひもとく美学入門
源河 亨