とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

現代と功利主義

こんにちは。冨樫純です。

 


倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル  

 


現代の公共政策における功利主義的思考

 


現代でも、政治や公共政策における功利主義的発想はさまざまなところで垣間見ることができる。

 


たとえば、菅直人元首相は、「最小不幸社会」という言葉を政治信条にしている。

 


菅元首相によれば、何が幸福かについては人それぞれ考え方が異なるため、国家は介入すべきではなく、各個人に任せておくべきである。

 


しかし、不幸は幸福ほど多様ではなく、病気や貧困が人々を不幸にすることは明らかだ。

 


そこから、政治は幸福の増進よりは不幸の削減を目的とし、「最小不幸社会」を目指すべきだという考え方が出てくる。

 


これは、科学哲学者として有名なカール・ポパーも支持した「消極的功利主義」という発想に近い。さらに今日では、「最大多数の最大幸福」という功利主義のスローガンそのものを唱える政治家や政治団体も現れている。

 


また、たとえば災害医療や救急医療では「トリアージ」が用いられることがあるが、これも功利主義的発想に基づくと言える。

 


トリアージとは、災害などで大勢の負傷者が出た

場合に、「どの患者を優先的に病院に運んだり、治療を行なったりすべきか」を決めるための選別作業のことを指す。

 


日本ではJR福知山線脱線事故秋葉原の通り魔事件などで使われていたことで一般に知られるようになった。

 


トリアージの基本的な発想は、治療を必要とする患者を緊急度に応じて選別し、病院への搬送や治療を行なう優先順位を決めるというものだ。

 


ただちに治療しなければ命にかかわる緊急度の高い患者は赤色タグ、それほど緊急ではないが早めに治療を行なうべき患者は黄色タグ、 軽傷の場合などすぐに治療を行なう必要のない患者は緑色タグ、そして、すでに死んでいるか治療が不可能な患者は黒色タグを付け、通常は赤色から優先的に搬送や治療を行なう。

 


一見するとトリアージは人命に順番を付けるようで非情な発想に思える。

 


しかし、このような順位付けを行なわなければ、軽傷の者を治療している間に重症の患者が亡くなるなどして、助けられたはずの人命が失われてしまう可能性が高い。

 


言いかえると、可能なかぎり多くの人命を救うために、トリアージというプロセスが必要なのだ。

 


大阪府医師会の「災害時における医療施設の行動基準」でも次のように紹介されているように、このトリアージの考え方の背景には功利主義的な発想がある。

 


災害医療の目標は、「負傷者の最大多数に対して、最良の結果を生み出す」ことである。

 


そのために重要なことは、助けうる負傷者に対して適切な医療を提供し救命することであり、救命の可能性が乏しい負傷者に対して人的、物的医療資源や時間を無駄に費やさないことである。

 


もう一つ、先の大震災で有名になった三陸地方の「津波てんでんこ」の教えも功利主義的なものとして理解できる。

 


これは、津波が迫っているときには、他人を助けることよりも自分の命を最優先して、各自てんでんばらばらに高台に向かって逃げよ、という教えである。

 


他人よりも自分の命を優先せよというのは、一見利己的な教えのように思える。

 


だが、時間が限られている状況の中で、どこにいるかわからない家族や友人を助けるために家や学校に戻るならば、共倒れになる可能性が高い。

 


むしろ、みなが津波てんでんこの教えに従って行動した方が、より大勢の人が助かる可能性が高い。

 


トリアージと同様、より多くの人を助けるためには、みながこのようなルールを守って行動することが望ましいと考えられるのだ。

 


このように、功利主義は、政治信条や資源配分や緊急避難時の方針として、今日でもその実例を見ることができる。

 


感想

 


たしかに、公共政策における功利主義的思考は理想的な考え方に思えます。

 


下記の本を參考にしました

 


功利主義入門』

 児玉聡

 ちくま新書

 

 

flier(フライヤー)