とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

結婚制度は詐欺の制度か

こんにちは。冨樫純です。

 


倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル  

 


ゴドウィンとウォルストンクラフト

 


ゴドウィンは『政治的正義』を刊行してまもなく、メアリ・ウォルストンクラフトと懇意になった。

 


ウォルストンクラフトといえば、フランス革命の余波が続く1792年に「女性の権利の擁護』を書き、女性も男性と同様、理性的で自立した人間になりうると宣言した初期のフェミニズム思想家の一人だ。

 


『政治的正義』の出版によって一大論争を巻き起こしたゴドウィンもこの当時は超が付くほどの有名人だったので、セレブ同士の付き合いだったと言える。

 


いかにもセレブらしく、このカップルにはゴシップ話が沢山ある。

 


ウォルストンクラフトには、ゴドウィンと知り合う前につきあっていた男性との間にできた婚外子の娘が一人いた。

 


当時の英国では、結婚せずに子どもを持つことは、現在の日本よりはるかに厳しい目で見られることであった。

 


この件に関して彼女は社会の偏見に苦しみ、また恋愛関係のこじれのために絶望して、服毒自殺を図ったり、テムズ川に身を投じたりするなど、何度か自殺を試みていた。

 


さて、ウォルストンクラフトは、ゴドウィンと付き合い出してからまもなく、自分が再び妊娠したことに気付いた。

 


彼女は、自分はこれ以上の偏見や中傷には耐えられないと考えて、正式に結婚するようゴドウィンに求めた。

 


ところが、である。ゴドウィンは、結婚制度を「あらゆる独占の中でも最悪の制度」と呼んで意を尽くして批判し、 結婚制度の廃止を提案していたことで、当時よく知られてた人物なのであった。

 


彼は「政治的正義』の中で次のように述べている。

 


ヨーロッパの国々の習慣では、無思慮でロマンチックな若い男女がくっつき、何度かデートし、あらゆる幻想に囚われた状態で、一生涯ともに生きることを誓う。

 


その結果どうなるかというと、ほとんどすべてのケースで、自分がだまされたことに気づくのだ。

 


結婚制度というのは詐欺の制度である。われわれは過ちに気づいたらすぐに正すべきなのに、過ちを大事にするようにと教わる。

 


徳や価値あるものをたゆむことなく探究すべきなのに、これ以上の探究は差し控え、最も魅力的で尊敬に値する対象に対して目をつむるようにと教わる。

 


結婚は法律の中でも最悪の法律だ。

 


ゴドウィンによる結婚制度に対する批判はまだまだ続くのだが、要するに、誰かと一生添い遂げるというような約束は、まず間違いなくより大きな幸福を生み出すことを妨げるため、正義に反する制度だというのだ。

 


ゴドウィンが提出した代案は、結婚制度は廃止して自由恋愛、 子どもができたらみんなで育てて名字はつけず、「わたしの父親」「わたしの息子」といった「わたしの」という発想をなくすのがよい、というものだ。

 


これはプラトンの『国家』を思わせるものだ。 ここでも、自分の家族への偏愛を批判する彼の思想が現れている。

 


さて、このように結婚制度を批判していたゴドウィンだが、驚くべきことに、彼はウォルストンクラフトの願いを聞き入れて結婚してしまう。

 


当然ゴドウィンの批判者はゴドウインの理論と実践が一致していないと非難したが、ゴドウィン自身は、人の幸福のために自分の信念を曲げることをそれほど問題に感じていなかったようだ。

 


こうしてお互いの知性を尊敬し、愛し合う二人は正式に結婚した。

 


しかし、残念なことに、ゴドウィンとウォルストンクラフトの幸せな結婚生活は半年ほどしか続かなかった。

 


ウォルストンクラフトは娘の出産後まもなくして、お産が原因で亡くなってしまうのだ。

 


最愛の女性を失ったゴドウィンは悲嘆に暮れる。そして彼は、自分を慰めるためにも、ウォルストンクラフトの伝記を書くことに決め、ほどなくこれを出版した。

 


これは淡々とした筆致で書かれているものの、ウォルストンクラフトに対するゴドウィンの愛情が行間からこぼれんばかりに溢れ出している素晴らしい伝記だ。

 


ところが、ゴドウィンがこの本の中で彼女の最初の婚外子のことや自殺未遂の話を赤裸々に書いたことで、本書は当時の社会で一大スキャンダルとなった。

 


ゴドウィンは故人の顔に泥を塗るような行為をしたとしてさらに評判を落とした。

 


ウォルストンクラフトにいたっては、百年近くに渡り思想史から葬り去られることになった。

 


話はまだ続く。 ゴドウィンはウォルストンクラフトの忘れ形見である娘メアリを、母親の思想を継ぐものとして大変可愛がっていた。

 


だが、彼女は16歳のときに駆け落ちしてしまう。相手はゴドウィンの大ファンとしてやってきた詩人シェリーだ。

 


この駆け落ちを知ったゴドウィンは怒り狂ったが、自分が『政治的正義』で自由恋愛を説いているのだから、あまり文句も言えない。

 


メアリはその後、シェリーと結婚して、メアリ・シェリーとなり、かの有名な『フランケンシュタイン』を執筆することになる。

 


なんともカラフルな一家である。

 


感想

 


ぼくも結婚制度にはあまりメリットを見出せていないので、ゴドウィンの考え方を否定しません。

 


下記の本を參考にしました

 


功利主義入門』

 児玉聡

 ちくま新書

 

flier(フライヤー)