こんにちは。冨樫純です。
独学で、憲法を学んでいます
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
皇室外交は憲法上許容されているか
外国訪問や外国の賓客招待の際に天皇が「おことば」 を述べること自体が憲法上許されるのか、という問題をまず考え、その点が肯定された場合に、つぎに、どのような内容の「おことば」 ならば、憲法上許され、また許されないのか、という問題を考えることが必要となります。
(1)「おことば」は私的行為か
天皇も生身の人間ですので、憲法に書かれていなくても、私的行為は当然許されます。
では、「おことば」は私的行為といえるのでしょうか。天皇が散歩中に出会った人に「おはよう、暑いね」と声をかけることは、たしかに私的行為といえます。
しかし、公務で来日している外国の大統領を皇居に招いて 「おことば」 を述べることまで私的行為とみなすことには無理があります。
ですから、「おことば」は私的行為としては正当化されないことになります。
(2) 「おことば」は国事行為か
天皇が国事行為をなしうることは、憲法の明文上明らかです。 では、晩さん会での「おことば」は、国事行為といえるのでしょうか。
憲法6条と7条は、「おことば」については直接ふれてはいません。 しいて該当しそうなものを探せば、7条10号の「儀式を行ふこと」となるでしょうが、そこでいう「儀式」は天皇が主宰する儀式を意味します。
そうすると、天皇が外国の賓客を晩さん会に招待して「おことば」 を述べる場合なら10号に該当するといえなくはないが、外国訪問の際に外国の大統領に招待される場合まで10号に含めるのは、やはり無理があります。
ですから、国事行為として正当化されるとしても、それは一部の「おことば」 だけということになります。
(3) 「おことば」は公的行為か
少なからぬ憲法学説は、天皇が国事行為以外にも公的行為をなしうることを認めます。
では、晩さん会での「おことば」は公的行為といえるのでしょうか。 この点については、憲法7条の9号と10号が 「外国の大使及び公使を接受すること」と「儀式を行ふこと」を国事行為として明示していることから、外国との儀礼的つきあい一般も、それらに準ずるものとして、公的行為とみなすことも可能です。
(4) 「おことば」の中身
しかし、天皇が外国訪問や外国賓客招待の際に、 「おことば」を述べること自体は憲法上許されるとしても、そのことから 「皇室外交」までが憲法上許されることにはなりません。
というのは、「皇室外交」として述べる 「おことば」の中身が問題になるからです。
この問題については、さらに、① 「おことば」 の内容を決定するのは誰か、② 「おことば」 の内容はどのようなものであってもよいのか、 という2点の検討が必要となります。
①については、形式的・儀礼的行為だから天皇が自ら「おことば」の内容を決定できると考えられるかもしれません。しかし、「おことば」といっても、純然たる私的行為ではなく、国事行為または公的行為として、その内容は内閣によって実質的に決定され、天皇はそれを読むだけということになります。
②では、内閣が決定するのなら、その内容はどのようなものであってもよいのでしょうか。
それには大きな制約があります。 たとえば、晩さん会で 「両国の発展と友好を心より願います」 といった社交辞令にとどまる内容ならば、憲法上許されるでしょう。
しかし、そこでの「おことば」が、社会主義を排して資本主義諸国だけの繁栄を図りましょうといったような政治的内容を含むものである場合には、憲法上許されません。
なぜならば、天皇は日本の象徴として、政治的中立性を要請されているからです。
以上の点から、社交辞令を越えた内容の 「おことば」を述べるような皇室外交を天皇が行うことは、憲法上許されません。
晩さん会で天皇とアメリカ大統領が並んで座っていても、 仲良く談笑していても、両者はまったく異質の存在であって、天皇に皇室外交を期待することはできません。
また、いかに雅子さんに外交官経験があっても、それを皇室外交として生かす道はありません。
感想
「おことば」もそうですが、皇室が政治に関わるのは難しいようです。
下記の本を参考にしました
『いちばんやさしい 憲法入門』
初宿 正典 他2名
有斐閣アルマ