とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

福祉国家の日本的形態

こんにちは。冨樫純です。

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル 

 


福祉国家の日本的形態

 


日本については、そもそも日本が福祉国家であるか否かということがすぐさま議論の対象となることが多い。

 


それは、日本の社会支出や社会保障費の水準が、福祉国家と呼ばれるヨーロッパの国々に比べると相対的に低い水準にあるからである。

 


たとえば、2009年の社会支出の対GDP(国内総生産)比は、 ドイツ (26.2%)、フラン(28.8%)、スウェーデン (27.7%)に比べると、日本の場合は 19.2%と低い。

 


とはいえ現在の日本人の平均的な生活水準が、他の先進諸国に比べて著しく劣っているというわけではない。

 


社会保障給付費の水準も、1960年代に比べると相当高くなっている。

 


とくに70年代以降の伸びは著しい。 2011 (平成23) 年度の国の一般会計予算(補正後予算)に占める社会保障関係費は 27.9% に及んでいる (このほかに社会保険制度を通じた給付がある。

 


また乳児死亡率や平均余命など健康に関する社会指標は、福祉国家の典型と考えられることの多いスウェーデンに匹敵する。

 


したがって、日本が福祉国家であるか否かについて考えるよりは、どのような特徴をもった福祉国家か、あるいは日本の社会政策がどのような特徴をもっているかについて考えたほうが生産的である。

 


福祉国家としての日本の特徴を見極めるにあたって最初に考慮しなければならないのは、日本の福祉国家化がヨーロッパ諸国に比べて約四半世紀遅れて始まったという点である。

 

 

 

福祉国家化が開始するためには、経済発展や高齢化が一定の水準に達していなければならないが、日本の場合、経済発展がヨーロッパの先進諸国の水準に追いついたのが1960年代になってからであったし、65歳以上人口比率が7%を超えて高齢化社会となるのは70年代に入ってからのことであった。

 


言い換えると、60年代までの日本には、福祉国家を必要とする国内条件が整っていなかったこと

になる。

 


ところが70年代までに、これらの条件が整い、「福祉元年」と呼ばれた73年以降に、日本でも、社会保障給付費の対国民所得比が急増するようになった。

 


この四半世紀のタイムラグのもつ意味は大きい。

 


日本が福祉国家形成を開始した1970年代というのは、世界的には、いわゆる「福祉国家の危機」 の時代に当たっていたからである。

 


ヨーロッパ諸国の場合は、「戦後の黄金時代」に福祉国家形成をおこなうことができたが、日本の場合は、スタグフレーションという逆境の時代に福祉国家形成をおこなわなければならなかった。

 


このため日本の社会支出がヨーロッパ諸国の水準にまで追いつくのは困難だった。

 


その代わり、日本では、社会支出による所得再分配の水準の低さを補うためのメカニズムが発達した。

 


その第1は、「日本的経営」———長期雇用と年功序列賃金を中心とする―と呼ばれる雇用慣行である。

 


これによって労働者の雇用の安定と生活賃金が保証され、当初所得が極端に不平等な状態になることは回避された。

 


第2は、公共事業の支出が著しく高かったことである。

 


これによって、先進地域から後進地域への所得再分配がおこなわれ、後進地域の住民が貧困や失業に苦しむことから免れた。

 


また日本の場合、経済活動に対する政府の介入が大きかった点も、社会支出(による所得再分配)の水準の低さを補った。

 


アングロサクソン諸国(イギリス、アメリカ、カナダなど)では、自由市場における競争が重要な役割を果たしているが、日本では政府が民間の経済活動に対して積極的な介入をおこない、また企業

間でも過当競争が生じないように調整をおこなう慣行が生まれた。

 


その結果、生産性の低い産業が保護され、大量の失業や貧困が出現することが回避された。

 


しかし日本もグローバル化の影響によって、 こうした社会支出の低さを補償するためのメカニズムが機能しなくなってきている点にも注意しなければならない。

 


1990年代以降、企業負担の軽減や規制緩和が進んだ。 雇用が流動化し、企業がかつてのような

「日本的経営」を維持することができなくなった。

 


また財政危機のため、かつてのような大規模な公共事業を実施することは困難となっている。

 


その意味で日本の福祉国家のあり方は転機を迎

えているといえる。

 


感想 

 


昔は政府が経済に介入して上手く機能していたが、現代ではそうではないようです。

 


だからといって市場にだけ任せておいていいのだろうかと思いました。

 


バランスが難しいと思います。

 


下記の本を参考にしました

 


『Do! ソシオロジー』改訂版       

 現代日本社会学で診る

 友枝 敏雄 他1名

 有斐閣アルマ

 

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