こんにちは。冨樫純です。
「 情動二要因理論」についてのコラムを紹介します。
確かに、曖昧な感情の時は、なおさら周りの状況から解釈すると思いました。
シャクターは、人が経験する情動とそれに伴う生理的喚起(動悸が速くなるなどの身体的生理的反応)は、あいまいで多様に解釈可能な経験であり、人は自分の生理的喚起を引き起こした原因を状況の中に求め、原因とみなした要因に応じた情動が経験されるとする情動二要因理論を提唱した(Schachter,1964)。
つまり、動悸が速まってドキドキしているとき、目の前に断崖絶壁があれば、「恐怖」を感じていると解釈し、目の前に魅力的な異性がいれば、「恋に落ちた」と解釈することになる。
言い換えると、私たちは情動経験そのものから直接自分が感じている情動を知るのではなく、状況の中にある手がかりを用いてこれを解釈するということである。
ここでは、情動二要因理論を検証したシャクターらの実験を紹介する(Sch-achter & Singer, 1962)。
シャクターらは、ビタミン剤が視覚に与える影響を検討するというカバーストーリーを用いて、興奮作用(心拍数の増加など)があるエピネフリンを実験参加者に与えた。
半数の参加者にはその薬によって興奮するということを説明し、残りの参加者には実際に生じる反応とは異なった説明(痒みが出るなど)をした。
そして薬の効果が現れるまでの間、同様の薬を与えられた他の参加者を装った実験協力者と一緒の
待合室でしばらく待機させ、その様子を記録した。
待機している間に実験協力者は、実験計画に基づき行動し、実験に対して不満を表明し、怒りを露わにする場合と、楽しそうにはしゃぎ回る場合とがあった。
待機時間中の実験参加者の感情を調べると、エピネフリンの副作用(興奮する)を説明されていなかった場合は、一緒にいた実験協力者が示していた情動(怒りまたは喜び)を感じていた。
興奮そのものは多様に解釈可能であるため、自分が感じている興奮が薬のせいだとわからなかった参加者は、一緒にいた人物の様子を手がかりにして、自分の興奮を自分が怒っている、または喜んでいると解釈したと考えられる。
同じようにエピネフリンにより興奮状態にあっても、あらかじめエピネフリンによって興奮すると説明されていた参加者の情動は、一緒にいた実験協力者の行動に影響を受けなかった。
自分自身の生理的喚起が多様に解釈可能であるという情動二要因理論に基づき、不安による生理的喚起を他の原因に結びつけることで、不安を低減しようとするなど、病気の治療に役立てようとする動きもあった。
しかし、このように誤った手がかりによって情動を誤解するという現象は当初想定されたほど堅固なものではなく、限定的な現象だという指摘もある(Fiske & Taylor, 2008)。
下記の本を参考にしました
『社会心理学』
池田 謙一 他2名