こんにちは。冨樫純です。
「反応時間を測定する意味とその測定方法」についてのコラムを紹介します。
反応時間を測定するという着眼点に感心しました。
社会心理学の実験研究の中で、実験参加者が反応に要する時間を測定し、従属変数とする場合がある。
接近可能性が高まった(活性化した)知識に対する反応時間を測定する例を説明した。
モデルから導かれる「接近可能性が高ければ反応時間が短く、そうでなければ長くなる」という
仮説を検討するために、実際にその反応に要する時間を測定するのである。
反応時間によって知ることができるのは、知識や概念の接近可能性の高まりだけでなく、カテゴリーとそれに対する評価の結びつきの強さ、情報処理の効率性、情報処理の複雑さなどがある。
たとえば、潜在的連合テスト(IAT)は、あるカテゴリーと評価(たとえば好ましい/好ましくな
い)の結びつきの強さを、当該のカテゴリーに属する具体的事例と評価に使用する単語を用いて、それらを一緒にまとめるか、別に分けるかという作業に要する反応時間を測定することで調べるものである(結びつきが弱いもの同士を一緒にまとめる作業は時間がかかるが、結びつきが強いもの同士であれば素早くできる)。
また、自己参照効果は、自分と結びつけられる情報の処理効率が高いという効果であるが、このことを示す指標の1つが、自分と情報を結びつけて判断することに要する反応時間である。
このように、同じ反応時間という指標でも、その指標が反映する認知プロセスはさまざまであり、どのようなプロセスに要する時間を測定しているのかは、研究の目的によって異なる。
反応時間は認知プロセスを直接測定する指標ではないため、その解釈に注意が必要な場合もあるが、特定の反応を導いている認知プロセスの特徴や性質を検討する際には、重要な指標となる。
反応時間を測定する実験においては、短い場合は1秒以下の反応を測定するため、実験者が手動で測定するのではなく、パソコン上で反応時間を測定するソフトウェアを用いるか、または、自作のプログラムを用いて測定することが一般的である。
たとえば、概念の接近可能性を測定する課題に語彙判断課題があるが、この課題では、実験参加者はパソコンの画面に呈示された文字列を見て、それが意味ある単語か否かを回答する。
呈示される文字列は「しんりがく」のように意味のある単語の場合もあれば、「しのりくが」のように意味のない文字列の場合もある。
接近可能性が高まっている概念に関連した単語の意味は、関連しない単語よりも速く意味を理解することができる。
この反応時間を計測するために、文字列の呈示から、参加者が回答する(多くの場合はキーボード上の指定されたキーを押す)までの時間を計測することになる。
適切な計測を行うためには、十分な練習課題を行い、課題に慣れた状態で実験を実施することや、反応の速さは個人による違いが大きいので、そのことが分析上統制できるように、ニュートラルな課題での反応時間を事前に測定しておくなどの工夫が必要である。
下記の本を参考にしました
『社会心理学』
池田 謙一 他2名