とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

親の面倒は誰がみる?

こんにちは。冨樫純です。

 


ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。

 


法律的なものです。

 


質問の内容は、主に女性目線からものです。

 


質問

 


最近、母は私に「お父さんが死んだら面倒みてくれる?」 と冗歌めかしてよく聞きますが、「あたりまえじゃない」と笑って答えています。

 


でもよく考えると、母が先に亡くなってポケた父だけが残されたら……

 


ちょっと心配になってきました。

 

 

 

解答

 


もともと日本では、旧来の家制度の伝統に従って、老いた両親は長男 (実際にはその嫁)が面倒をみると同時に、遺産も相続するというのがあたりまえでした。

 


しかし, 最近の核家族化や少子化の進行とともに、こうした伝統が崩れつつあります。

 


長男といってもサラリーマンの場合には、仕事の関係上、親との同居どころかその近くに住むことすらもむずかしくなっていますし、嫁と姑、舅との問題を避けるために長男よりも娘と同居するこ

とを望む親も増えています。

 


また、健康が悪化するなどして介護を必要とする状態になったときに、できるなら他人の嫁よりも自分の娘に面倒をみてもらいたいと思うのも人情かと思います。

 


最近、「子どもを1人産むなら女の子のほうがいい」と思う若い親が増えてますが、こうした事情を反映しているのかもしれません。

 


しかし、これはあくまでも世間一般の話であって、法律上、親の面倒をみるのは娘 (女性) の責任とされているわけではありません。

 


法律上の扶養(生活保障)には、 公的扶養(生活保護法などによる国家的生活保障) と私的扶養(親族間の生活保障)の2つがあります。

 


ここで問題となっている私的扶養、とくに老親に対する子の扶養義務(生活扶助義務)については民法が定めています。

 


まず前提として、子はいついかなるときでも老親を扶養する義務を負うわけではありません。

 


民法上の扶養義務は、扶養の必要状態と可能状態があるときにはじめて発生します。

 


たとえば親が健康で経済的に余裕のある場合には子は扶養する義務がありませんし、親が扶養を必要とする状態になっても、子に経済的余力がないなど扶養する能力がない場合には扶養義務は発生しません。

 


また、扶養義務がある場合でも、必ずしも引取り扶養が義務づけられるわけではありません。

 


後述するように老親を老人ホームなどの公的施設に入所させて、金銭扶養 (経済的援助)をすることも可能です。

 


たとえ老親が寝たきりになっても、家族が家庭に引き取り、在宅介護をすることが法的に義務づけられるわけナではないのです。

 


民法は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」 (同877 条1項) と扶養義務者の範囲を定めています。

 


これによると、両親を扶養する義務は、あなた(子)のような直系血族 (祖父母や係も含む)はもちろんのこと親の兄弟姉妹にあたるおじさんやおばさんもこれを負います。

 


なお、特別の事情がある場合には、親の3親等内の親族も家庭裁判所の審判によって扶養義務を負わされることがありますが (同2項)、実際にはほとんどありません。

 


このように親の扶養義務といっても、あなただけでなく複数の人がこれを負っています。

 


でも実際には、このうちの「まずはだれが」親の面倒をみるか、ということが重要な問題となります。

 


両親とも健在で独立した家計を営んでいるうちはともかく、それができなくなったときにまずは子のうちのだれが親を扶養するかをめぐって、えてして責任のなすりつけ合いがはじまるわけです。

 


この点について, 民法は原則として当事者間の協議にまかせています (同878条)。

 


しかし、遺産相続の問題がからんだりして、どうしても話合いのつかない場合がありますから、そうしたときには家庭裁判所が決定します (同条)。

 


この扶養義務者の順位の決定について、民法は明確な判断基準を定めていませんが、家庭裁判所は、親の要扶養状態と子の経済状態(扶養能力)のほか、要扶養者である親本人の希望、子と親の日常的な親しさの度合い、子の遺産相続の状況など、さまざまな事情を考慮して総合的に決定します。

 


したがって、たとえば経済的余裕があるからといってその子が当然に親を扶養する義務を負うわけではなく、親が同居を望んだ子が扶養し、経済力に応じて扶養料を他の子が負担するということも行われます。

 


また、いったん話合いによって兄が親を引き取ったが、親が兄の配偶者とどうしても折合いがつかず、兄の家を飛び出して妹の家で世話になるというような話もよく聞きます。

 


こうした場合には妹が兄に代わって親を扶養することになりますから、妹は兄に対して一定の扶養料を請求することができます (最高裁1951 · 2. 13判決)。

 


いずれにしても、当事者間の話合いで解決するのがべターですから、もしもの場合に備えて普段から両親を含めて話し合っておくことが大切です。

 


下記の本を参考にしました


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ