こんにちは。冨樫純です。
ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。
法律的なものです。
質問の内容は、主に女性目線からものです。
質問
姉は結婚して10年になる専業主婦、 2年前から義兄が他に女性をつくり家出。
なんとか生活費だけは送金してきていたのですが、先日、離婚届にハンを押すようにいってきたんですって。
小学生2人の子どもを抱え、パートで働いている姉が心配です。
解答
離婚をするには、①協議離婚、②調停離婚、③審判離婚、④和解離婚、⑤認諾離婚、⑥判決離婚(裁判離婚)の6つの方法があります。
夫婦の間で離婚について話合いをし、合意のうえで離婚届を作成して、それを役所に提出するという離婚の方法です(民法763 条)。
協議離婚
協議離婚はもっとも簡単で手間ひまもかからない
のですが、「追い出し離婚」を認めることになったり、合意内容の公正さが保たれないというマイナス面もあります。
そのために、離婚不受理申出制度が用意されており、離婚届を一方的に出されそうな人は「不受理申出」をしておくと、離婚届は受理されることはありません(戸籍法 27条の2第3項)。
調停離婚
当事者で話合いができないときに家庭裁判所の調停委員会が間に入って、合意形成を手助けする制度です (家事事手続法 247条(未施行)、家事審判法21条1項)。
調停は、裁判官と男女各1名ずつの調停委員が当事者の言い分と紛争の実情を聴いて、円満な解決のために調整作業をする場です。
離婚するかしないかだけでなく、親権者の決定、財産分与·慰謝料、子どもの養育費などについても取り決めることが可能です。
審判離婚
夫婦で離婚の合意はできているのに家財道具の配分とかわずかな慰謝料額の食違いで調停が成立しないときに、家庭裁判所が職権で離婚の審判をする方法です (家事事件手続法284条(未施行)、家事審判法 24条)。
和解離婚
人事訴訟法の改正により、2004年4月から離婚訴訟でも和解による離婚が認められることになりました (同法37条1項)。
認諾離婚
離婚訴訟で請求を相手方が認め、調書に記載されると認諾での離婚が認められます (人事訴訟法 37 条1項)。
判決離婚(裁判離婚)
裁判所で離婚を認めるだけの理由があると判決してもらって離婚する方法です (民法770条)。
離婚できる理由のことを離婚原因といいます。
民法では、①不貞行為、②悪意の遺棄、3年以上の生死不明、④回復の見込のない強度の精神病、⑤その他婚姻を継続し難い重大な理由をあげています(同740条1項1号~5号)。
その他婚姻を継続し難い重大な理由
暴力、虐待、侮辱、性的異常、犯罪行為などの信頼や愛情を揺るがすような客観的事情があって、夫婦関係が失われその回復の見込みがない場合。
アルツハイマー、認知症などでも離婚が認められたことがあります。
戦後の改正で生まれ変わった民法は、結婚生活が破綻したら離婚を認める破綻主義の立場をとりました。
しかし、最高裁は、他に女性関係をもつなどして結婚の破綻に責任がある配偶者(有責配偶者)は、相手方に対して離婚の請求をすることは許されないという立場を明らかにしました(最高裁 1952 ·2·19 判決等)。
もし、このような有責な配偶者からの離婚請求を認めると妻は「踏んだり蹴ったり」で、 追出し離婚を認めることになるからだというわけです。
学説も当時、自ら結婚生活を壊しておいて虫がよすぎるとか、不公平だ、落ち度のない配偶者を保護すべきだという意見が圧倒的でした。
しかし、夫婦の愛情や信頼が失われて長くたつのに、形式的に結婚を続けさせてみても愛情や信頼が復活することはありえません。
また、どちらに責任があるかの判断は、夫婦という相互的人間関係のこじれですから、微妙なことが少なくありません。
とくに、訴訟での夫婦の泥試合は、お互いのプライバシーをさらけ出し、非難や中傷合戦に終わって、子どもとの関係さえ傷つけてしまいます。
そこで、最高裁は、有責な配偶者からの離婚請求であっても、①夫婦の別居が相当長期間に及び、②未成熟の子どもがなく、 ③離婚により精神的社会的·経済的に苛酷な状態におかれることがないときには、離婚が認められると大きく転回しました(最高裁1987 .9.2判決)。
『ライフステージと法 』
副田 隆重 他2名
有斐閣アルマ