とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

離婚の是非

こんにちは。冨樫純です。

 


ある質問や疑問に答える形式で、解決の参考になりそうなことを書いていきます。

 


法律的なものです。

 


質問の内容は、主に女性目線からものです。

 


質問

 


結婚が一生に1度の大切なセレモニーだとすると、離婚は悪いことなんでしょうか。

 


離婚した女は人生に失敗したのも同然だなんて

いわれるけど、そういう時代は過去のことじゃありません?

 


解答

 


これまでは、結婚は一生に1度、一生のうちに1度しかできず、だれと結婚するかで人生のすべてが決まってしまうと考える人がほとんどでした。

 


たしかに、結婚は人生のパートナーを選択する大切な問題ですが、結婚に対する意識や考えかたはだいぶ変わってきたのではないでしょうか。

 


最近では、晩婚化、少子化、女性の自立などの影響を受けて、結婚の場でも個人の自己実現や愛情を重視し、失敗したらやり直すべきだという考えかたが広まってきました。

 


内閣府大臣官房広報室が2009年に実施した男女共同参画社会に関する世論調査でも、「結婚しても相手に満足できないときは離婚すればよい」に賛成する人が50.1%と、どちらかといえば賛成となって、離婚育定派が半数を離婚否定派(44.8%)を押えました (2007 年の調査では賛成46.5% 反対47.5% となっていました)。

 


同じ世論調査で、「結婚は個人の自由であるから、結婚してもしなくてもいい」に賛成する人も 70.0%になり、結婚や離婚に対する人々の意識が大きく変わりつつあることを示しています。

 


わが国でも1965年あたりから離婚件数が増え、71年には10万件を突破し、2002年にはついに 28万9836件と史上最高を記録し、2010年には25万1378件となりました。

 


なんと、2分6秒に1組が離婚ということになりま

す。これを欧米諸国と比べてみると、アメリカが2組に1組、ロシア、ドイツ、イギリスがほぼ3組に1組、わが国は3~4組に1組くらいになり、日本も確実に離婚先進国となりつつあることがわか

るでしょう。

 


それでは現代の離婚はどのような特色をもっているでしょうか。

 


未成年の子どもをもつ夫婦の離婚は2010年には全体の58.5%で、25万人の子どもが影響を受けました。そこで、親の離婚に巻き込まれてしまった子どもの保護をどうするかが切実な課題となっています。

 


また、結婚して20年以上もたつ熟年夫婦の離婚は、2003年に全離婚件数の16.7%を占め過去最高を記録し、2010年も15.9%となっています。

 


わが国では2009年に協議離婚が87.9% を占め、和解離婚1.3%、判決離婚は1.0%、調停離婚が9.7% となっています。

 


離婚の大半を占める協議離婚は、夫婦が私的に話合いをして決めるという簡便なもので、ブライバシーの保護に役立つ面もありますが、 離婚をめぐる公正で納得づくの合意が得られているか、子どもの利益が守られているかなど、心配な点も少なくありません。

 

 

 

また、離婚は何か悪いことをした懲らしめや罰のためにされるのではなく、新しい幸せをみつけるために行われるものなのです。

 


子どもたちも、冷たい、愛情のなくなった家庭で、傷つけ合いながら育つより、単親でも、明るい笑顔が戻った暖かい家庭のほうがホッとするでしょう。

 

 

 

中世ヨーロッパの国々では、キリスト教の影響を受けて、人間の意思で解消することをいっさい許さないという建前をとっていました。

 


これを婚姻非解消主義といいます。 聖書の説く「神が合わせたものを人が離してはならない」という教えを忠実に守る立場でした。

 


その後、宗教改革の影響で、結婚や離婚の問題は

教会から国家の手に移されることになり、姦通、 遺棄、虐待など非行があれば離婚を認めるという有責主義の立場が登場しました。

 


婚姻法では、婚姻上の義務達反や誤ちをおかした配偶者を罰し、何ら落ち度のない配偶者にごほうびとして離婚を認めるものでした。

 


離婚法は、離婚をできるだけ制限することで結婚や家族の安定をはかろうと考えていました。

 


しかし、どんなに法的な離婚を制限してみても、結婚は不完全な人間どうしの結びつきですから性格が合わないとか、愛情や信頼がなくなってしまうという不幸な事態は避けることができません。

 


そこで、当事者の有責無責を間わず、愛情や信頼が失われて結婚生活の目的を達成できないくらいになってしまったときは、むしろ離婚を認めていこうとする考えかたが生まれました。

 


これを破綻主義、無責主義の離婚法といいます。

 


歴史的には、離婚法は有責主義から破綻主義へという大きな流れを示してきました。

 


したがって、破綻主義の離婚法のもとでは、夫婦のどちらが悪いか非難をするのではなく、結婚生活が回復する見込みがないまでに破綻し、元に戻らない状態であるかどうかが法的に重要だということになります。

 


このようにみると、離婚は、失敗に終わってしまった結婚生活から夫婦を解放して再出発を保障する制度だといえます。

 


破綻主義の離婚法のもとでは、離婚は悪いことでも非難されることでもなく、形骸化した結婚生活の埋葬手続といえるでしょう。

 


『ライフステージと法 』

  副田 隆重 他2名

  有斐閣アルマ