とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

「法制度」の中の不平等

こんにちは。冨樫純です

 


独学で、社会学を学んでいます。

 


そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。

 


タイトル 

 


「法制度」の中の不平等

 


"法制度"にも、じつは、〝見えない差別〟が潜んでいる。

 


戦後、「日本国憲法」の登場(第14条、第24条など)によって、男女平等は基本的理念となったはずであるし、法制度の側面での差別はほとんど解消されたように考えられている。

 


しかし、現実には、さまざまな面で、性による法的な差別や排除が存在しているのである。

 


わかりやすい例をあげれば 「国籍法」だ。

 


この法律は、1985年まで「父系主義」を原則としてきた。

 


つまり生まれた子どもの国籍は、父親の国籍をもって決定するという 男性中心主義に立脚したものであった。

 


この法律が、「父母両系主義」に改められるのは、「女性差別撤廃条約」の批准を控えた1985年、戦後40年も経過してからのことだった。

 


現行の法律にも、見ていくと、女性に対するさまざまな不利な条件が見いだせる。

 


たとえば、「非嫡出子」への差別の問題だ。

 


現行の民法では、基本的に「父系主義」をとって

いるので、相続において、「非嫡出子」(婚外子、父と母が法的に「結婚」していない子ども)に対する差別が存在している。

 


この点は、とくに諸外国から日本の法制度の遅れとしてしばしば指摘されてきた。

 


そもそも、戸籍における記入のしかたから、婚外子の扱いは違うのだ。

 


出生届けを出すとき、「制度婚」(結婚届を出した結婚)のもとで生まれた子どもは「続柄」の欄に、「長男」「長女」といった具合の記入をすることになっている。

 


婚外子の場合は、「男」「女」としか書けない。

 


考えてみれば、これは、子どもの位置づけを、〝父親の視点”から決定しているということだろう。なぜなら、女性の視点から決めるなら、父親が誰であろうと、上から「長男」「長女」としていけばいいはずだからだ。

 


余談になるが、子どもが生まれて出生届けを出すとき、ぼくも、ちょっとこの戸籍法に抵抗してみた。

 


続柄の欄に「娘」と記入したのだ。 市役所では、「これでは受け入れられない」ということで、1時間ほどの押し問答の末、結局、簡易裁判で決するということになった(もちろん、裁判には負けたが)。

 


夫婦別姓」だけが話題の焦点になっているが、現在問題になっている「民法改正」もまた、〝性差別条項の是正〟がテーマだ。

 


ちなみに、「選択的夫婦別姓」(別姓/同姓を選択できる制度)についていえば、抵抗する割合において、男性の方が圧倒的に強いというのも面白い。

 


男性たちにとって、婚姻制度は、妻や子をつなぎ止める重要な制度であり、同姓という原則は、そのつなぎ止めの一つの重要な要素なのだということがよくわかる。

 


男性に多い見解に、「別姓になると家族のつながりが弱まる」というのがある。

 


しかし、姓が異なるぐらいで弱まる家族なら、もともと弱いつながりしかなかったということではないか、とぼくなどは思う。

 


民法改正」のテーマは、この「別姓問題」だけではない。

 


たとえば「結婚年齢の是正」もそのテーマの一つだ。 これまでは、女性の結婚年齢の下限は16歳、男性は18歳だったものを、ともに18歳と平等にしようというものだ。

 


なぜ、女は16で男18だったのか。もちろん、女性優遇のためではない。

 


どうせ子を産む機能だけが重要なのだから、女性の方は精神年齢が低くてもいいが、男の方は家族を養う責任もあるから、あるていど精神年齢が高い方がいいという、差別的な発想が背景にはあったのだという。

 


また、女性の「再婚禁止期間」の短縮もまた、民法改正の重要事項の一つだ。 現行法では、離婚した女性は、180日間は再婚が禁止されている。

 


これを100日に短縮するというのが改正案だ。

 


男性にはない「再婚禁止期間」が、女性にだけなぜ設定されているかといえば、これも、父系主義に原因がある。

 


つまり前の婚姻関係の間に女性が妊娠している可能性もあるため、その子どもの父親がどちらかをはっきりさせるために、この禁止期間が設定されているというわけだ(離婚にいたる過程でできた子どもが、その時の夫の子どもであるかなんて、わからないと思うのだが・・・・・・、変な禁止期間だ)。

 


ぼくは、これは、男女ともに、 再婚禁止期間なしにするのがいいと思うけれど、法務省はどうもこの一線は越えたくないようだ。

 


また、「非嫡出子」への相続差別も、「嫡出子」(婚内子)と同等にするというのも改正案の目玉だ。

 


じつは、この〝非嫡出子差別"は、これまでも国際的に厳しい批判を受けてきた。

 


この批判を受けて、1995年春から、いつの間にか「住民票」における続柄欄が、婚外子に対しても差別のない同じ形式で記入されることになった(いずれも、「子」 と記入されるようになった)。

 


この変更は、一般市民には、「なぜ、書き変えるようになったか」なんて、ほとんど知らされないまま行なわれている。

 


このへんも、「知らしむべからず」といった〝日本的"な行政のやり方で、ぼくは好きになれない。

 


もっとオープンに、この書き変えの理由を市民に知らせ、議論することも必要だったのではないかと思う。

 


感想

 


国籍や婚姻に関しても、父系主義がまだまだ根強いと感じました。

 


また、国籍法に抵抗するあたりは、社会学者らしくておもしろいと思いました。

 


下記の本を参考にしました 

 


男性学入門』 

 伊藤 公雄

 作品社

 

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