こんにちは。冨樫純です。
「類人猿の言語習得」についてのコラムを紹介します。
チンパンジーがヒトに近い動物だということは周知のことですが、言語を多少聞きとっていることに驚きました。
チンパンジーに言語習得をさせようとする試みは、20世紀半ばから多数行なわれている。
初期の研究は、音声言語を習得させようとした。
たとえば、ヘイズ夫妻(Hayes & Hayes, 1952) は、チンパンジーのヴィッキーを生後3日目から自宅に引き取って育てたが、話しことばの聞き取りは多少できても、わずか数語しか発声できなかった。
その後チンパンジーの発声器官の構造上、ヒトのような多様な発声ができないことが明らかにされ、手話を習得させる研究が盛んに行なわれるようになった。
たとえば、ガードナー夫妻ら(Gardner et al.1989) による研究では、チンパンジーのウォッシューは手話の「単語」 を100以上習得し、2語文や3語文を自発的に使うようになったという。
また、ボノボ(ピグミーチンパンジーという種)のカンジは、日常のヒトとのやりとりから、かなりの程度、ヒトの音声言語の聴き取りが可能である。
カンジが9歳のときにサベジーランボウ (Savage-Rumbaugh, 1994) が行なった理解力テストでは、カンジにヘッドホンを着けさせ、検査者は隣室からマジックミラーを通して観察する。
テスト文としては、カンジが日常活動の中でふだん聞くことのない新しい文660種(たとえば英文 「レーズンを靴の中に入れなさい」など)を聞かせて、正しく応答するかどうかを見た。
その結果、72%正しく応答できたという(ヒトの2歳児の正答率は 66%)。
このことは、カンジが英語の言語環境に晒されて周囲とのやりとりを行なってきた過程で、英語の文法を抽出できたことを意味する。
下記の本を参考にしました
『心理学』第5版補訂版
鹿取 廣人 他2名