こんにちは。冨樫純です。
「引換券」についてのコラムを紹介します。
アメとムチ的な交渉術は、心理学的な根拠に基づいたものなんだと感じました。
食物や嫌悪刺激は、それ自体動作を強化する働きをもつが、本来は強化の働きをもたない中性刺激敷が条件づけによって強化の働きをもつようになることがある。
引換券(トークン:token)はその1つである。
ブドウと交換できるポーカーチップは、チンパンジーにとって一種の引換券として、強化の働きをもつようになる。
引換券は新しい行動の学習に利用することができ、かなり手間のかかる課題にも有効なようである。
ある研究 (Kelleher, 1958) でポーカーチップを引換券としてキンパンジーのオペラント条件づけが観察された。
チンパンジーはポーカーチップ1個を手に入れるためにある反応を125回行なわなければならず、さらにポーカーチップを50個集めてそれをスロットに入れてはじめて餌を得ることができる。
これはかなりの時間と労力を要する課題であるが、チンパンジーはこの課題を遂行した。
この場合1回の報酬を得るために、実に6250回もの反応が必要になる。
広い意味での引換券は私たちの身の回りにも見られる。
たとえば、母親が子どもに「1回お手伝いすれば花のスタンプを押してあげよう。スタンプが5つ集まったらお菓子をあげよう」と言う場合には、スタンプは引換券の役割をもつと言ってよい。
引換券は強化の働きをもつとともに、実際の報酬を得る前に、多数回反応を行なって1個のポーカーチップを手に入れ、さらにそれを多数個集めるというように、2つあるいは多くの行動をつなげる働きをもつとみなされる。
なお、この引換券の強化の働きを利用した行動療法の一種としてトークンエコノミー(token economy)がある。
患者が望ましい行動を行なった際に引換券を与え、これが一定量に達したときに特定の品物と交換させたり特定の活動を行なうことを許したりする。
下記の本を参考にしました
『心理学』第5版補訂版
鹿取 廣人 他2名