とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

交通刑務所とは

こんにちは。冨樫純です。


「交通刑務所と交通事犯受刑者」についてのコラムを紹介します。


通常の刑務所の他に、交通刑務所なるものがあり、区別されている理由も学ぶことができました。


①交通刑務所とは


交通刑務所とは、交通事故における過失致死傷罪または危険運転致死傷罪道路交通法違反のいずれか、または双方を理由に懲役または禁鋼の刑を受けている者(交通事犯受刑者)だけを収容する専門の刑務所で、わが国では、千葉県の市原刑務所がそれに当たる。


もっとも、それ以外の地域でも、通常の刑務所の一画を区切って交通事犯受刑者だけを集めて刑を執行することはある。

 

これらを、交通事犯受刑者の集禁処遇という。


交通事犯受刑者の集禁処遇は、現在、全国8ヵ所の施設で行われている。


このように、交通事犯受刑者だけを別に集めて処遇するのは、一方で、一般の刑務所の受刑者には暴力団の構成員などのように犯罪性の進んだ「プロ」 の犯罪者が多いため、交通事犯のみを理由とし犯罪性のあまり進んでいない受刑者がそのような者から犯罪の手口を学んだり犯罪組織に誘われたりすることを防ぐためであり、他方で、交通犯罪者に対して交通教育という単一の目的の下に密度の濃い効果的な処遇を行い、再社会化を図るためであるとされている。


②交通事犯受刑者の特徴


一般的にみて、交通事犯で懲役、禁鋼の実刑となるのは、過失致死傷罪ではいわゆる 「ひき逃げ」を伴うものが多く、道路交通法違反では常習的傾向のある悪質事犯者が中心である。


もっとも、このように重大または悪質なものが中心だといっても、交通事犯の場合には一般の犯罪に比べて社会復帰は容易である。


年齢では一般の受刑者と比べて20歳代の若年層が多く、就学中の者を除き、犯行時に無職であった者はきわめて少ない。


また、出所時に仕事の決まっている者の割合もきわめて高い。


交通刑務所の再入率(出所者のうち、ふたたび刑務所などの施設に戻ってきた者の割合)は数%にすぎない。


逆に、一般の刑務所における受刑者の平均年齢は40歳を超え、犯行時に無職であった者の割合もきわめて高く、再入率は平均して60%を超える。


なお、過失致死傷や危険運転致死傷を理由に第一審で懲役または禁鋼の実刑を言い渡された者は、1971年の4845人をピークに減りつづけたが、量刑の重罰化傾向に伴い1998年から増加に転じ、2008年では654人となっている。


これは、交通事故の増加に対して懲役、禁鋼という刑罰による威嚇で対処しようとした1960年代から70年代前半にかけての刑事政策が見直され、「犯罪者」らしくない一般の市民が犯す交通事犯に対しては被害者への賠償などを通じて反省と紛争解決を図り、とくに悪質なものに対してだけ、懲役、禁鋼の実刑で臨もうとしたが、近年はマスコミの風潮を反映して、悪質者に対する量刑が厳しくなったことのあらわれである。


下記の本を参考にしました。


『はじめての法律学』HとJの物語

  松井 茂記 他2名

  有斐閣アルマ