こんにちは。冨樫純です。
政治哲学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
難民の境遇
グッディンのモデルにある「剰余義務」の遂行対象となる事例を取り上げたいと思います。
難民問題です。
2015年9月、トルコの海岸で3歳の男の子の死体が発見されました。名前はアイラン・クルディ君。両親と兄の4人家族です。
シリアからのクルド人難民としてトルコ に滞在していましたが、よりましな生活を求めて、ヨーロッパの玄関となるギリシアの島へ向かう途中でした。
パスポートがないため、密航業者に費用を支払い、早朝にボートで出発しましたが、すぐにボートが転覆。アイラン君はトルコの海岸に打ち上げられました。お父さんだけが生き残りました。
アイラン君の遺体を抱き上げるトルコの海岸警備員を写した写真は、世界中に配信され、衝撃を与えました。
40年以上にわたる独裁政治から内戦へと混乱が続くシリア。国外に出た難民だけでも数百万人と言われています。
ごく普通の暮らしをしていた人びとが居場所を奪われ、犯罪者でも悪徳者でもないのにまるでそうであるかのような扱いを受け、人間らしい暮らしをするための自由と権利を確かなものとするために、ヨーロッパへの辛く苦しい道を辿っています。
イギリス人ジャーナリストのパトリック・キングズレーの『シリア難民』に収録されている、スウェーデンへの長く過酷な旅路を辿ったハーシム・スキームのメッセージには、以下の一文があります。
シリアは、とても暮らしていけない地獄に変わってしまいました。人々の日常は崩壊し、安全な場所を求めて逃げ回らなければならなくなりました。でも、逃げるたびに、地獄は勢いを増して追いかけてきます。人々は家を失い、投獄され、屈辱的な扱いを受けました。
この国を離れなければ、自分も子供たちもダメになってしまう。非常に難しいことでしたが、正しい決断でした。
私の子供たちにはもう住む家がなく、学校もない。シリアにとどまっていれば、武器や戦争に囲まれて育つことが普通になってしまう。
だから国を出るしかなかったのです。
以前から難民問題を抱えていたEU諸国には、2015年、「難民危機」と呼ばれる重大な事態が生じていました。
シリアからの難民だけではなく、 アフリカからの難民も合わせて、地中海では密航ボートの事故で多数の人びとが亡くなっています。玄関口となるイタリアとギリシアには2015年の1年間で100万人以上の難民が到着し、他のEU諸国に難民受け入れを増やすよう分担を求めていました。
EUには域内の移動の自由があります。しかしこの大量の難民の流入を防ごうと、国境を閉ざす動きが強まっていました。そのなかで報道されたアイラン君の写真は、EU諸国のリーダーたちに「道徳的な責任」(イギリスの当時のデイヴィッド・キャメロン首相の言葉)を痛感させ、ドイツのように難民の受け入れ数を増やす国もありました。
ミラーも2016年の著作 Stranger in Our Midst のあとがきで、2015年のヨーロッパでの難民危機を受けました。
感想
難民問題はかなり切実な問題だと思いますが、感情論だけでは解決しないと思います。
下記の本を參考にしました
『正義とは何か』
現代政治哲学の6つの視点
神島 裕子著