こんにちは。冨樫純です。
「ゲゼルの階段昇りの研究」についてのコラムを紹介します。
早い時期に訓練すればいいというわけではなく、それぞれの学習にとって適切な時期があるという見解を知り、なるほどと思いました。
ゲゼルら(Gesell & Thompson, 1929) は、遺伝的に同一である一卵性双生児を対象に双生児統制法の実験を行ない、成熟優位説を検証しようとした。
種々の心的機能の発達について検討が行なわれているが、階段昇りの実験はとくに有名である。
双生児の一方の子どもTに対して、まず、生後46 週目から6週続けて毎日10分間、階段を用いて特別な訓練を行ない、他方の訓練を与えない子どもCと比較してみた。
階段を昇ると、棚の上に置かれたおもちゃに手が届く。
Tは訓練を行なった当初は、たしかに一時成績が向上し、26秒で階段を昇れるようになったが、C
はこの時点で45秒かかった。
これだけ見ると、早期の訓練の効果がありそうだ。
しかしTは、はじめての階段昇りのとき手助けを必要としたが、遅れて訓練をはじめたCは手助けを必要としなかった。
その後2週間の訓練でCは10秒ほどで階段を昇ることが可能になり、場合によってはTを追い越すほどであった。
これは適切な時期に訓練を行なうことが有効であることを示す。
このことからゲゼルは、訓練、学習のような経験よりも神経系の成熟が発達に重要な要因であること、そして訓練学習が効力を発揮するには、その成熟にとって適切な準備が備えられることが必要だと主張した。
しかしこの場合Cは、Tが訓練している期間中じっと動かずにいたわけではない。
Cは、 階段昇りそのものの訓練は受けてはいなかったが、そのあいだに動き回っていたはずである。
ゲゼルの実験は、それぞれの学習にとって適切な時期があることを示唆してはいる。
下記の本を参考にしました
『心理学』第5版補訂版
鹿取 廣人 他2名