とがブログ

本の紹介と、ぼくの興味があるテーマについて書きます。

メディアと食べもの

こんにちは。冨樫純です。

 

「フード·ファディズム」についてのコラムを紹介します。


日本でも、テレビである食べものがダイエットに効果があると放送されると、たちまち店頭からなくなることがある。

 

こういう現象は、日本人だけではなかったと感じました。

 

サラ·ウィリアムズの夫マイケルが食事中に胸を押さえて倒れた時、駆け寄った妻に向かって、夫は苦しい息の下からこう頼んだという。


「すぐ電話してくれ、緊急コールセンターは24時間営業だ……」。

 

言いながら夫が指さしたのは、冷蔵庫に貼ってある保険会社の電話番号だった。


「医療費の高いここアメリカで、国は助けてなどくれません。病気は医者に行って治すものではなく、自分の体は自分で守るのが鉄則ですよ」

 

そう言いながらサラが私に見せてくれたのは、醤油やソースの瓶のように食卓に並んだサプリメント

瓶だ。

 

食事のあとのデザートが終わると、今度は家族全員で健康維持のためにビタミン剤を飲むのだという。

 

ER(緊急救命室)に運ばれた彼女の夫に下された診断は、「糖尿病予防に飲んでいたコエンザイム·ピルの過剰摂取」だった。

 

「現在アメリカでは、栄養補助食品として毎日サプリメントを摂取する人口が約6000万人いる。

 

時々摂取する人も加えると、国民の約半分がサプリメント常用者だ。

 

1994年にビル・クリントン大統領が生活習慣病増加に伴い「栄養補助食品健康教育法」(DSHEA法)を制定、これによってサプリメントは「食品」と「医薬品」の中間に位置づけられ、世界最大の医学研究機関であるアメリカ国立保健研究所に「栄養補助食品室」が設置された。

 

政府の全面的なパックアップを受けたサプリメントが国の健康増進政策の中心になったことで、別の弊害が出始めることになる。


マンハッタンにあるセント・ビンセント病院に勤務するミシェル・ロイド医師は、アメリカ人のサプリメント信仰のリスクをこんなふうに語ってくれた。

 

「本来健康というものは、バランスの取れた食事、運動、睡眠の3つで維持されるものです。


ですが多くのアメリカ人がサプリメントさえ飲んでいれば大丈夫と思い込んでいるんです」

 

彼女のところにくる患者は、皆病気で死ぬことを怖れているという。

 

若い女性患者は皆太ることを異常に怖れ、ストレスのたまる働き方を変えるようにアドバイスしても、生活はそのままで睡眠薬に頼ろうとする。

 

彼らをそのような傾向に走らせる張本人は誰かと聞くと、ミシェルは「メディアです」と言った。

 

特定の食品を摂れば健康になれると思い込むその流行を「フード・ファディズム」と呼びます。

 

メディアから流れてくる情報は、私たちアメリカ人を強迫観念に走らせるのです。

 

もっと稼がなければ、もっと脂肪を落とさなければ、時間の流れに逆らって、老いに追いつかれないようにしなければ。

 

海の向こうに敵がいると言われれば、最新式の武器を用意して、攻撃される前にこっちからやらなければ、という具合にです。

 

常に不安をあおるような情報をばらまき続けられた人々は、フード·ファディズムに走り出す。

 

シャワーのように注ぎ込まれる情報量に比例して、安心を得るためのサプリメントの瓶数は増えていくのだと、ミシェルは警告する。


下記の本を参考にしました

 

『ルポ 貧困大国アメリカ』
 堤未果
 岩波新書