こんにちは。冨樫純です。
哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。
そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。
タイトル
注意を促す情報
値段などの情報は必ず悪い方向に働くわけではない。むしろ、食べ物の特徴を捉える助けとなることもある。
それを理解するために重要なのは、注意の向け方だ。
たとえば、友人の家に行って、紅茶を出されたとしよう。ちょうど喉が渇いていたので一気に飲み干した。
この場合、紅茶を飲む第一の目的は喉の渇きを癒すためで、その味を楽しむ余裕はなかった。
しかし、友人から「その紅茶は100グラムで4000円する」と聞いたらどうだろう。
近所のスーパーで簡単に手に入るものの10倍、下手したら20倍の値段だ。
こうした値段の情報を得た後では、同じ紅茶をもっと注意して飲むようになるだろう。
どんな味わいや風味がするか、いつも飲んでいるものとどう違うか気になってくるはずだ。それにより、以前は気づかなかった柑橘系の香りや味わいに気づくことができるようになる。
そして、 「味や香りが普通とは違う」と判断できたり、より楽しんで紅茶を飲めるようになったりする。
この場合、値段の情報は評価を直接変化させているわけではない。それが変化させているのは知覚的な注意だ。
注意の変化により知覚を通して得られる情報が変化し、違った評価が下されているのである。
この場合、「値段が高い」という情報は、 「おいしい」という評価を強制するものとはなっていない。
むしろ、知覚を変化させるきっかけの一つになっているだけである。 友人が紅茶の値段を言わないで「もっとじっくり味わってみてよ」とだけ言っていたとしても、同様に注意が変化し、同じような評価の変化が生まれていたかもしれない。
「低脂肪ごぼう健康スープ」と聞くと、ごぼうや脂肪の少なさに注意が向く。
これに対し、「鳴門鯛のダシたっぷりポタージュ」では、鯛のダシに注意が向くだろう。
口に入ったものは同じでも、そのなかの何に注意するかによって感じられる味が変化し、評価が変わってしまうのだ。
もちろん、注意の変化が必ず良い結果をもたらすとは限らない。注意深く味わってみると前には気づかなかった雑味が感じられるようになって、「おいしくない」と思う可能性もある。
また、「これくらいの味の紅茶にそんなお金を出すなんて、騙されたんじゃないか」と友人を残念に思うこともあるかもしれない。
とはいえその場合でも、注意深く味わうことで
紅茶がもつ特徴をより細かく捉え、より正確に味を判断し、より正確な評価を下すことができるようになっているだろう。
風の同じことは他の情報にも当てはまる。材料の産地はどこか、どういう経歴の料理人が作っているか、どういった製法で作られているのか。
こうした情報は注意に影響する。 「隠し味に醤油が使われている」と聞いたら、たとえ醬油そのものの味はしなくても、何か普通と違うところがあるのではないかと思い、それを探ろうと注意して味わうようになるだろう。
感想
「注意の向け方」によって印象が変わることを知りました。
下記の本を參考にしました
『美味しい』とは何か
食からひもとく美学入門
源河 亨